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SNS情報の時代 ファクトに基づく宗教論必要

2017年3月29日付 中外日報(社説)

若者の宗教意識や行動については、社会には一定の関心が存在する。最近では若者の宗教離れがいわれたり、逆に宗教に関わるブームが起こっていることに注目が集まったりする。「御朱印ガール」もその一つである。

しかし多くは印象論、局所的な現象の言及である。きちんとした調査に基づくものは非常に少ない。そうした中に、國學院大日本文化研究所と「宗教と社会」学会のプロジェクトが合同で20年間にわたって実施してきた学生の宗教意識調査結果は非常に参考になる。

質問項目の半分ほどが毎回同じ内容で、調査方法も同じ。時々の話題についての意見も聞いており、この間、若者の宗教意識についてどんなテーマが関連付けられてきたかを知ることもできる。

このたび、1995年から2015年までの20年間に12回にわたり実施されてきた調査結果が、一冊の書籍になった。『学生宗教意識調査総合報告書』である。また書籍と同じ内容のものが、日本文化研究所のホームページにアップロードされている。PDFファイルを自由にダウンロードできる。

調査は20年間に総計で6万6千人ほどの学生を対象にしてなされた。若い世代の宗教に対する意識、宗教的習俗の実践度合い、宗教問題への関心や意見について考えるにはうってつけである。これまで調査ごとに報告書が出されていたが、12回分が1冊にまとめられたことで、容易にこの間の推移を見ることができるようになった。

95年に実施された最初の調査に回答していた人たちは、すでに大半が40代になっている計算である。社会経験を積み重ねて、宗教に関する意識や行動も幾分変化していることであろう。

それでも20歳前後で形成されていた価値観は、かなり安定的に維持されるという面もある。最近の記憶に関する研究では、人生の記憶で最も残るのは10代から30代までのものという説が有力である。

この説を踏まえるなら、日本人の宗教に関する考え方の推移を考える上で、学生アンケート調査の結果は、なかなか参考になるといえる。つまり学生に対する20年の調査が、今後20年間の日本人の宗教意識の推移の予測にも参考になるということである。

トランプ大統領の誕生で、フェイク・ニュースという言葉がにわかに流行した。SNSによる情報交換の怖さを示す言葉でもある。そんな時代であればこそ、ファクトに基づく議論というものを大切にしなければならない。そのような議論にも資する報告書だろう。