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「ゆりかご」10年 親子の命と幸せのために

2017年4月5日付 中外日報(社説)

様々な理由で、親が育てられない子供を無人の窓口で受け入れる「こうのとりのゆりかご」が、熊本市の慈恵病院に日本で初めて開設されてから、5月で10年になる。

関西にも設置を進める動きがあり、「ゆりかご」への理解は以前より広がったが、望まない妊娠で遺棄されるなど幼い命が犠牲になるケースは後を絶たない。妊娠・出産に悩む母親の思いを社会全体で受け止め、支援の手を差し伸べる必要がある。

厚生労働省の調査によると遺棄を含む0歳児の虐待死は例年20~30件を数える。2014年度は27人で、生まれて間もない0日児は15人だった。

大阪・箕面の市民団体は熊本に次ぐ2例目のゆりかごを関西につくろうと活動を続け、2月に神戸市の助産院に設置すると発表した。しかし行政との調整が難航し、開設の見通しは立っていない。団体は昨年3月の発足以降、関西の複数の病院と交渉を重ねて、助産院でも設置は可能と判断した。だが、市が求める常駐医師の確保が難しい状況である。

設置が足踏みしている原因の一つに団体側の準備不足があるのは否めないが、ゆりかごをめぐる法制度が未整備であるのも問題だ。

政府はゆりかごについて「直ちに法律違反とはいえない」としつつ、具体的な運用は自治体に委ねて見解等も示していない。熊本での開設から10年を迎えて各地への広がりも予想される中、何らかの指針を示す時期ではないか。

慈恵病院には、15年度末までに125人が預けられた。預け入れ人数は近年減少し、年間10人前後で推移している。一方、病院に寄せられた妊娠・出産相談の件数は07年度の501件から15年度は5466件に増えた。ゆりかごをテーマにしたテレビドラマが13年に放映されて以降、急増したという。悩みを抱え周囲にも相談できない母子が孤立することのないよう、相談窓口を周知し、充実させることは喫緊の課題だ。電話受け付けを24時間態勢にするなどサポート体制の充実が預け入れ件数を抑えているとみられる。

今秋の開設を目指す箕面の団体も相談業務に力を注ぐ方針だ。ゆりかごは最後の受け皿、できるだけ利用されないことが望ましいとの思いは関係者に共通している。

ゆりかごの事業は蓮田太二・慈恵病院理事長や、団体理事長の人見滋樹・日本カトリック医師会会長らキリスト者の力によるところが大きい。親と子の命と幸せを守り育むために宗教者の取り組みが求められる。