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抜き難い不信感 原発事故の「避難解除」

2017年4月19日付 中外日報(社説)

東日本大震災に伴う東電福島第1原発の事故後、避難指示区域に指定された福島県の4町村で、帰還困難区域を除いて避難指示が解除された。だが、住民の帰還はなかなか進まない。高齢者を中心に住み慣れた故郷へ帰りたいという意思はあるのだが、依然放射能汚染の心配があり、6年の歳月で生活基盤の前提となる地域のインフラもずたずたになっているからだ。

各自治体は「このままでは町村が消滅してしまう」と帰還事業に力を入れてはいる。この3月、浪江町役場の担当窓口は活気に満ちていたし、飯舘村では除染による汚染土を詰めた袋が山積みの仮置き場近くに、巨大な太陽光発電のパネル群が目立った。原発事故被災を受け、復興計画の中に位置付けられた再生可能エネルギーへの転換策として、村出資の会社でメガソーラー発電を推進し、昨春から2カ所計1万1500キロワットの出力で稼働している。

だが、全国を回って全村避難の悲劇を訴えてきた同村区長の酪農家は「戻って昔通りの生活をしたいのはやまやまだが、安全性が保証されなければ帰れない。特に小さな子供がいる若い世代は不安です」と言う。そこには、「安全宣言」を出した行政、特に国への抜き難い不信感がある。

山中にあり地震被害も少なかった同村では震災直後、津波禍で海岸部から避難してきた人々を受け入れた。だが原発の爆発による放射性物質の飛散拡大の情報は隠され、危険を知らされないまま雪の降る屋外で救援活動し、多くの村民が被曝したという。しかもその後、行政“お墨付き”の学者が講演に来て、汚染の不安を持つ住民に「心配ない」と話した翌日、全村が「計画的避難区域」に内定された。「もう騙されない」という村民の気持ちはもっともだろう。

一方で、やむなく故郷を後にした自主避難者に対して「自己責任だ」と言う復興相がいる。品格を疑う暴言、被災者の苦悩どころか事実認識についてもかくも理解能力の低さを見せられては、大臣の資質を問わざるを得ない。

飯舘村には、役場職員の仕事をする傍らで離散した檀家を回る住職や、避難指示後も単独で居残った宮司がいる。いずれの寺社も村民の崇敬を集めてきた。6年間、氏子が訪れることも少ない中で社を守り、例祭も復活させたこの宮司は、一時帰村する住民の間で「放射能への警戒が風化しているのでは」とも心配していた。「事故は人災です。何でも『想定外』にされたらたまらない」と、氏子村民の憤りを代弁した言葉が耳に残る。