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労働と奉仕の間 宗門も人間性豊かな職場に

2017年5月17日付 中外日報(社説)

本紙4月26日・28日付でも既報の通り、真宗大谷派は真宗本廟(東本願寺)内の研修施設で働いていた元職員2人に、未払い残業代の解決金を支払った。この元職員は僧侶でもあり、4年間の有期雇用契約で門徒の世話をする補導職を務めていた。同派では「勤務体制の覚書」(現在は廃止)により、補導には長年にわたり時間外手当を支給してこなかった。

2人は外部の合同労働組合に加入し、交渉の末、労働協定が締結されて、未払いの残業代が支払われたが、今年3月に雇用期間が終了して雇い止めになった。この出来事は全国紙やテレビでも大きく報道された。しかも、元職員は上司から机をたたいて怒鳴られるなどパワハラ被害を受け、退職後も体に不調を来していることまで判明した。

元職員は時に午前6時45分から午後11時まで勤務し、月間の時間外労働時間が100時間以上になることもあった。80時間の「過労死ライン」を超え、実際問題として過労死を招きかねない過重労働である。これが“僧侶としての自己研鑽”の名目で正当化されたことは大きな問題だ。時間外労働の部分は僧侶の修行と見なし、無償労働の扱いにしてもよいと考えていたとしたら、労働搾取であると言われても仕方ない。

僧侶も生身の人間である以上、その待遇は法的・倫理的な基準を満たすものでなければならない。このように過重な勤務状態が続けば、門徒への行き届いた世話も困難となってしまうだろう。

もう一つ、この出来事で発覚したのは、宗門の側にこの労使間の問題を解決するという自浄作用がなく、元職員が外部の労働組合を通じて団体交渉をすることによって、ようやく決着を見たという事実である。

教団施設であればこそ、一般の企業以上に、人間性のある職場づくりをしていく義務がある。たとえ門徒の世話が宗教的な奉仕という位置付けであっても、雇用関係がある以上、しかるべき対価を払い、人間味のある処遇をすることにより、その奉仕も人間性豊かになるものだからである。

宗教者の仕事には、奉仕や修行という要素があり、そのことにより、どんなに一般の労働と同じ内容であっても、付加価値として宗教的意味合いを帯びてくる。しかし、そのためには、何より人間性を尊重した職場環境であることが前提だ。そして宗門や教団側も、また世話を受ける信者の側も、宗教者である職員と共に、人間味豊かな共同体をつくっていくという自覚が一層求められてこよう。