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部落差別解消へ 「推進法」の理念浸透を

2017年6月16日付 中外日報(社説)

「『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議」(同宗連)は先頃第37回総会を開き、木越渉・真宗大谷派解放運動推進本部長を新議長とする第19期役員を選出した。昨年12月施行の「部落差別解消推進法」の理念をいかに浸透させるかが課題になる。

同法は自民・公明・民進3党の議員が昨年5月に共同提案し、12月に国会で成立した。「現在もなお部落差別が存在」し、基本的人権を保障する憲法の理念にのっとり「許されない」として、国や自治体が差別解消の施策を講じ、相談体制を充実させ、教育・啓発活動、差別の実態調査を行うよう求めている。

部落問題をめぐっては1969年の同和対策事業特別措置法の制定以降、住宅・道路整備など生活環境の改善が図られた。2002年に事業が終了し、その後は同和対策の根拠法のない状態だったが差別は現存するとして部落解放同盟などが法整備を求めていた。

「部落差別解消推進法」は全6条で罰則のない理念法だが、「部落差別」の言葉を初めて法律に盛り込み、差別は許されないと明記するなど、差別解消の取り組みの上で意義は大きい。

制定の背景には情報化の進展に伴うインターネット上の悪質な書き込みや、ヘイトスピーチの増加など差別をめぐる近年の状況変化がある。法務省の統計によるとインターネット上の人権侵犯事件は12年の671件から16年には1909件に増え、毎年過去最高を更新している。

昨年は戦前に出版された『全国部落調査』の復刻版のネット販売が計画され、一部の情報がネットに出回るなどして問題になった。相手が被差別部落出身で親が結婚に反対するなどの結婚差別や就職差別も根強く残っている。

同宗連は1981年の結成以来、差別戒名をはじめとする部落差別やハンセン病差別の問題など、差別解消・人権確立の運動に幅広く取り組み、成果を挙げてきた。教団レベルでも研修会などが定期的に開かれ、人権問題に関わる組織の整備も進んだといえる。

しかし、経典にある差別的表現をめぐり一部教団が検討を進めているが、寺院の過去帳開示の問題は今も絶えず、宗教界の差別克服の取り組みはなお途上だ。同宗連、教団レベルの啓発の取り組みを宗教者一人一人の人権意識へつなげていくことが求められる。

部落差別の撤廃に向け、開祖・宗祖が願った平等・平和な社会を希求する宗教界への期待は大きい。全ての人の人権が尊重される社会へ、学びと実践を深めたい。