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恫喝と信頼軽視の政治 いまこそ筋を通す姿勢を

2017年6月28日付 中外日報(社説)

物事を決定するスピードがますます速くなり、それに追われている。では、新しい決定によって何か意義深い変化が起こるのかというと、そうではない。効率を上げることに追われているので「結果を出した」ことになるが、何のために効率を上げようとしているのか分からなくなる。本来、大切にしたいことが見失われていく。

効率を優先すると、数で決めることが正当化される。道理を通すこと、筋を通すことが後回しにされる。現在の世界の政治にその傾向が見られる。政治学者の杉田敦教授(法政大)がこう述べている。「軽々に強硬手段に訴える。圧倒的な議席数を有しているのだから、国会会期を延長して、見かけだけでも整えればいいし、都合の悪い文書が出てきても『怪文書』などとせず、調査中と言えばいいのに、恫喝的な態度をとる」(「マフィア化する政治」朝日新聞6月19日)

「身内や仲間内でかばい合い、外部には恫喝的に対応する」というのは確かにマフィア的と言ってよい。「規制緩和」とか「岩盤規制に穴をあける」などと言うが、実際は「筋を通す」のをやめてマフィアのようなやり方で「業績を上げ結果を出す」ということだ。

「筋が通っていない」ことを示されると、「自分は支持率が高いけれども、あなた方は支持率が低い」などと言う。「認めず、調べず、謝らず」という姿勢だが、要するに数字が勝負なのだから、筋を通す手順は最小限で済ませようという姿勢だ。杉田教授は米国やロシアの現政権もマフィア化しているというから、トレンドに乗っているということか。

だが、身近な生活を振り返ると、私たち自身の生活の端々で似たようなことが起こっていないだろうか。福島原発災害では筋の通らないことが次々に起こった。放射線防護では、これまで守るべき基準とされていたものがやすやすと無視されていった。そして専門家が信頼を得るための土台を自ら掘り崩した。

効率を上げるために、あちこちにしわ寄せがくる。本当はじっくり話し合って信頼を土台にした合意を得たいのだが、そうできない。とはいえ、筋を通すことで信頼関係が成り立っている領域はまだまだ多いはずだ。現代政治の悪影響を社会にさらに広く及ぼすようなことがあってはならない。

結果と効率ばかりを重んじる社会で筋を通し信頼関係を築いていくには、自らの中に確かな拠り所が必要だ。宗教こそそのような拠り所の源泉となるはずのものである。