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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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比叡山メッセージ 平和のための祈りと行動を

2017年8月11日付 中外日報(社説)

30周年を迎えた比叡山宗教サミットで4日、「比叡山メッセージ2017」が採択された。「比叡山メッセージ」は同宗教サミット初回の1987年、10周年の97年、20周年の2007年と採択されており、今回は4回目である。

内容を見ると、この30年の歴史を振り返りながら、新たに見えてきた人類社会の課題に応じようとするもので、これまでより一段と長く立ち入った内容を含んだものになっている。これは比叡山宗教サミットの成果であるとともに、この間に世界各地で進められてきた宗教対話や平和のための宗教協力の成果を反映したものである。

そこでは、宗教の名によるテロに対し「いかなる理由があろうとも、尊いいのちを軽んずる暴力を認めることはできない」と説くとともに、世界の多くの地域で戦闘や空爆が続き、多くの住民が犠牲になり、また難民生活を余儀なくされていることにも触れている。そして「地球社会には、テロや国家暴力を抑えきれないことへの絶望も広がっている」としている。

「メッセージ」はまた、核兵器の廃絶を強く訴えている。前日の3日に行われたシンポジウムでは、7月7日に国連で採択された核兵器禁止条約を取り上げ、その意義が大きいことを確認した。日本が早期に条約に加わることを求める意見を後押しするものだ。「メッセージ」はさらに、「人類社会は、将来世代にきわめて大きな負荷を及ぼす原子力の利用の限界を深く自覚しなければならない」とし、「我々は核廃棄物を残す核エネルギーの利用に未来がないことを強く訴える」とも述べている。

「メッセージ」が国際的・国内的な格差問題の重要性に触れているのも注目すべき点だ。「いのちの尊さが脅かされている背景には、現代の政治・経済体制の問題があることを認識しなければならない」とあるように、平和を脅かすのは戦闘やテロだけではなく、平常に見える社会の中で深まっている分断や亀裂に注意を向けなくてはならない。「平和を考えるとき一番重要なのは、他者の存在を受け容れ、弱者に対する配慮を欠かさないことである」という。

仏教・神道・キリスト教の伝統を引く日本の諸宗教団体、海外からキリスト教、仏教、イスラーム、ユダヤ教、ゾロアスター教の諸勢力代表が参加し、日本で開かれた祈りの集いで、平和への強い願いと決意を込めたこのメッセージが採択された意義は大きい。その内容を吟味しつつ、平和のための今後の行動にどのようにつなげていくのか、見守っていきたい。