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日野原氏の最期 終末期の「質」向上を

2017年8月30日付 中外日報(社説)

聖路加国際病院名誉院長の日野原重明氏が7月、105歳で亡くなった。超高齢社会で人はどのように生き、死を迎えるべきなのかを身をもって示した生涯だった。

日野原氏は胃ろうなどの延命治療を拒否し、自宅で家族に見守られながら息を引き取ったという。「望ましい生き方と人生の終え方を提言した先生が、それを実践した生を終えられた」(福井次矢・同病院院長)との言葉に納得した人も多いだろう。

医学界はこれまでの「延命至上主義」の反省に立ち、終末期医療の在り方として患者本人の意思を第一に尊重する姿勢を打ち出している。延命治療の希望などを生前に伝えるリビング・ウィル(事前指示書)や「かかりつけ医」の普及などはその一環だ。

横倉義武・日本医師会会長は3月、岩尾總一郎・日本尊厳死協会理事長と対談し、「医師としてその人らしい終末を迎えていただけるよう、しっかり対応し、体制も整えたい」と語った。現在、会長の諮問機関の生命倫理懇談会が「超高齢化社会と終末期医療」をテーマに議論を重ねており、今年度中に答申をまとめる予定だ。

厚生労働省は2007年、「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」で、患者本人の意思を基本とすることや、患者や家族の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療とケアを行う必要性を打ち出している。

ところが同省の意識調査(13年)で、ガイドラインを「知らない」「参考にしていない」と答えた医師、看護師が共に5割を超えた。同省は14年度から全国の病院を対象に研修会を開き、患者の話を聞く相談員の育成など終末期の医療体制の整備を進めている。

終末期の患者に必要なケアは身体的・精神的苦痛だけでなく、スピリチュアルな側面にも及ぶことは周知の通りだ。

WHO(世界保健機関)は「緩和ケア」の内容に、苦痛の軽減・除去等と合わせ、死を迎えるまで患者が人生を積極的に生き、家族が死別悲嘆に対処できるよう支えることを挙げている。

医療関係者だけでこれらを担うのは難しく、宗教者への期待は大きい。同懇談会の14年の答申「今日の医療をめぐる生命倫理」は、「患者の心の平安を尊重するために、欧米のチャプレンのような聖職者が、日本でも緩和ケアチームに求められている」とした。

一人の死は、遺族や友人ら遺された人の生き方にもつながる。終末期の「クオリティー・オブ・ライフ」(人生の質)の向上に宗教界も本腰を入れる時だ。