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改憲が目指す方向 「あの手口」に警戒が必要

2017年9月8日付 中外日報(社説)

明治憲法は、制定以来半世紀以上、一度も改正されることなく、戦後、日本国憲法の施行とともに失効した。安倍晋三総理の目指す改憲が実現すれば、我が国の憲政史上、失効(全文改正)以外では初の憲法改正となる。

明治憲法は維新の国制大改革を踏まえて制定された。日本国憲法も敗戦、GHQの占領、大日本帝国の解体という国家体制の変化を前提としている。安倍総理は「戦後レジームからの脱却」をしきりに呼号していたが、自民党が野党時代に発表した憲法改正草案は、まさに国制の再改革に等しい内容だった。

現在は改憲のハードルを下げるため、有権者の抵抗が少ない条項が優先して改正案に取り上げられているようだ。だが、安倍総理が改憲実現の先に目指すところは(最近あまり耳にしなくなったものの)やはり戦後レジームからの脱却だろう。その道筋だけは作っておきたい、という動機は変化しているように見えない。

大日本帝国憲法が皇室典範と共に一度も手を付けられなかったのは(皇室典範は条文追加がある)、「国体」は不変である、とする理念と無縁ではないと考えられる。一方、日本国憲法は大日本帝国憲法より長い期間、改正されることなくきたわけだが、現行憲法擁護派の間に、戦後体制は不変であるとの信念が伏在するわけではないだろう。

護憲派が激しく抵抗するのは、この改憲の動きが振り子の大きな揺り戻しにつながることを恐れるからである。その点、安倍総理が目指している憲法改正の方向性は、穏健な改憲論者にとっても歓迎できるものではあるまい。

改憲の「入り口」の敷居は低く設けられていても、その扉はどこに向けて開かれているか。改憲案の個々の条文を検討するだけにとどまらず、どのような国の在り方を目指して提案されているのかを十分に認識する必要がある。

最近、麻生太郎副総理は「結果が大事だ。何百万人殺したヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくても駄目だ」と発言し、ヒトラーの「動機」を擁護するものと解釈されかねない、と急いで撤回した。かつて「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気が付かない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」との失言で、同氏が国内外から批判を浴びたことを直ちに思い出した人は多いだろう。

麻生氏は政治家として正直すぎるのかもしれない。どうやら、「あの手口」を私たちは警戒しなければならないようだ。