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進むグローバル化 宗教研究者自身が世界的視野を

2017年9月20日付 中外日報(社説)

ヨーロッパ日本研究協会(EAJS)の国際会議が、ポルトガルのリスボン大で8月末から4日間開催された。EAJSは1973年に組織され、ほぼ3年に1回欧州の都市で国際会議を開く。今年は第15回に当たる。英語での発表と質疑応答が原則である。

広く「日本研究」を掲げ、研究者は人文・社会系の広い分野に及ぶ。宗教研究者も数多く参加し、宗教に関わる多くのセッションが開催される。今年は政教関係、神道、仏教、新宗教などの宗教史関連のテーマの他、コンピューターゲーム、アニメと文化との関係などの発表もあった。歴史的分野の研究とともに、現代日本で起こっている現象への関心も深いことが分かる。日本で当たり前のことが別の視点で論じられ興味深い。

日本の宗教研究者が比較的多く参加する国際会議は、5年に1回のIAHR(国際宗教学宗教史会議)、隔年開催のSISR(国際宗教社会学会)などがある。これらの学会の現状からは、グローバルな視点の宗教研究は着実に進展していることが分かる。しかし、いささかの危惧も感じられる。

国際交流が以前に比べて格段に便利になった環境を利用し、積極的に国際的交流を広げる宗教研究者がいる一方で、国内の議論から一歩も出ようとしない研究者が依然として少なくないことである。国際会議に積極的に出て発表したり外国の研究者と交流を深めようとする宗教研究者は、決して多いといえない。そもそもそうしたことが必要だとも思わない研究者や関心がない研究者もいる。

むろん国外の会議に出席するのは、言語の問題の他に経済的な理由その他があって、とりわけ若い研究者にとっては、なかなかハードルが高い。しかし国内で開催される国際会議にも全く関心を示さない研究者も少なくない。言語の問題は一応おくとして、日本の宗教は日本人でないと深く研究できないと考える研究者もいる。これはまったく誤った認識である。

古代や中世の宗教関連の文書の解読や日本宗教の調査などにおいても、もはや日本人でないと深い研究ができないという時代ではない。母語が英語ではないヨーロッパの研究者が、日本の文化について英語で発表している姿を見るなら、刺激も得られるはずである。

人文系の学問の重要さを社会に認識してもらうには、まず研究者が世界的に視野を広げなければならない。なぜ今、人文系の学問を充実させなければならないのかを具体的に語る必要がある。グローバル化という言葉だけでは説得力を持たないのは当たり前である。