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宗教文化財と観光 信仰対象として尊重を

2017年11月1日付 中外日報(社説)

あまたの国宝を集めた特別展が京都国立博物館で開催され、多くの観覧者が訪れている。展示物の多くが寺社の仏像などの文化財だが、それら指定文化財などを風化や破壊から保護し、その学術的価値や文化的価値を長く守り伝えようという文化財保護法を今、抜本的に改正する動きがある。

一言で言えば「保存」から「活用」へ目的の拡大だ。現行では指定文化財はその所有者の責任で修復や維持管理、公開が行われ、国や行政は補助や許可をする。このため管理が万全にはいかない可能性もある。これを、文化財は地域全体の「宝物」という発想で広く国民が親しめるようにし、総合的な保存活用を進めるのが骨子。具体的には、未指定物件も含め自治体が地域にある文化財について民間による収益事業なども組み合わせた計画を作成し、これを国が認定する制度を導入する。

例えば仏像などの「モノ」だけでなく、広く景観環境も含めた対象を観光関連事業などに組み入れる、あるいは展示会やイベントに供するといった内容が考えられる。その収益が保存費用に充てられるのはメリットだ。一般国民の側から見れば、文化財に接する機会が増える。確かに、例えば古代の立派な仏像でも学術的価値を守るために常時、博物館の収蔵庫などに収納したままでは寂しい。やはり本来の寺院に安置されたり、時には展覧会に出展されることによって多くの人々に親しみを持たれることになるのだろう。

先般、本社主催の「文化財再発見シンポジウム」で画期的な取り組みを紹介した。「西国観音霊場」などが点在し立派な観音仏像が数多く伝えられている滋賀県長浜市が、東京の中心部に設置しているギャラリー「観音ハウス」。指定仏像を中心に名品を順番に展示し、首都圏での観光情報発信を通じて地域振興を図るものだ。まるで行政による「出開帳」のようで、入場者も多いという。

ただ、このように文化財としての側面や観光の側面ばかりに光が当てられると、本来は信仰の対象として仏像を護持してきた寺院には複雑な思いもあるだろう。聖観音像を出展した同市内の寺院では、例えば秘仏特別公開の際に拝観客が無断で写真を撮っていたという。住職は「どんな仏様にも深い信仰と願いが蓄積している。デジカメ片手の観光の前に、まず心の目でしっかりご覧になり、観音様が人間に何を教えておられるのかをじっくり考えていただきたい」と訴える。

文化庁による法改正作業ではそのような視点も望みたいものだ。