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暴走の危険はらむ 子ども・老人受難の国

2017年12月13日付 中外日報(社説)

かつて耳にした「子ども叱るな来た道だもの。年寄り笑うな行く道だもの」で始まる格言は、童歌風で分かりやすく記憶に残る。浄土教篤信者の言葉らしいが、個々人の処世の戒めなのに、今ではゆとり喪失の世への警句のように聞こえてしまう。

社会の主流を外れた弱い立場の人々に冷たく、不機嫌な世相の下で子どもは産みにくく、育てにくい。高齢者もますます生きづらくなっていく。心の世界の変調はいつまでも治まらない。

子どもを取り巻く環境の厳しさは「いじめ」や「虐待」の日常化に象徴される。把握された虐待は昨年12万件を超え、過去最多だった。また、マンションの共用空間や公園には「子どもの声がうるさい」などの張り紙が貼られ、夜泣きする赤ちゃんを母親が近所に気兼ねし、ついたたいてしまうケースが増えていると聞く。電車内で母親に抱かれた赤ちゃんの泣き声に乗客が露骨に顔をしかめる。よく見かける光景である。

保育園不足が昨年来騒がれているが、一方では園児の声が騒音だというクレームで、特に大都市で開園の延期や建設できない事例も相次いでいるようだ。

高齢者の状況も深刻だ。挙げればきりがないが、例えば特別養護老人ホームの入所待機者は昨年36万6千人で前年より16万人近く減ったのは、国が比較的軽度な要介護高齢者を除外する制度にしたからという。それでも保育園の待機児童より一桁多い。団塊の世代の高齢化もあり、介護を受けられない介護難民も、また親の介護で勤め先を辞めざるを得ない介護離職者も増え続けていく。

最近、高齢者が車のアクセルとブレーキを踏み間違う事故が大きく報道され、高齢者に免許を与えるなという声を助長している。だが、ペダル踏み間違い事故は全年代にまたがり、件数では20歳代が最も多い。報道がゆがんだ先入観を醸成する。公共交通機関のない過疎地は車がお年寄りの命綱である実情も忘れてはいけない。

子どもの受難も、高齢者の生きづらさも、つまりは人々の心の耐性が衰えている表れだろう。それで強く懸念されるのは、その精神土壌は近隣国の脅威をあおられると歯止めが利かなくなり、暴走しかねないことだ。破局である。

社会の構成員全員が力を合わせたとき、人は最もよく生きているといわれる。未来を担う子どもたちは平和を願う大人たちを支え、お年寄りには愚かな争いを避ける知恵がある。その両方を軽んじていては、いくら武力で外敵に備えても国の明るい展望は描けない。