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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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分裂させる力 抗議の表明から始めよう

2017年12月22日付 中外日報(社説)

今年は人々をことさら引き裂こうとする政治的な主張が目立った。世界規模で分裂をもたらした一つの契機は、トランプ米大統領の政策やツイッターでの発言である。中東からの移民排除に象徴されるのは、人間を生まれにより分断する思考である。大統領就任の5日後にはジョン・F・ケネディ空港でイスラム教徒の女性職員が男性に暴行される事件が起きた。

オーストリアの国民議会は5月にブルカやニカブなどを公共の場で着用することを禁止する法案を可決した。ヨーロッパでもイスラム教徒を排斥しようという動きは一定の根強さを示している。こうした人たちにとってIS(「イスラム国」)が関係しているとされるテロの頻発は、自分たちの行動を正当化する格好の材料になる。

日本では6月に共謀罪が可決された。これもテロ対策を主たる理由にしている。しかし、イスラム教徒というだけで、これまでにも不当な扱いを受けた経験を持つムスリムは、この法案が悪用されることへの危機感を表明した。法案には抗議や批判を表明した宗教団体もある。真宗大谷派、本山修験宗、日本聖公会などだ。だが、沈黙を守った教団の方が多い。与党公明党の支持母体である創価学会も態度を明確にしなかった。

法案の是非は簡単には論じられないが、政治家の国際感覚の欠如した差別発言などには、もっと断固とした抗議が必要である。自民党の竹下亘総務会長は11月に、国賓のパートナーが同性であった場合、宮中晩さん会への出席には反対という旨の発言をした。同月には自民党の山本幸三衆院議員が、黒人差別とも受け取られかねない発言で批判された。これらはささいな問題ではない。このような意識を持つ人が国政に関わっていることを示しているからである。

宗教界の多くは地道に差別や貧困などの社会問題に向かい合い、分断とは反対の方向を目指している。例えば妙智會教団は5月に中米パナマで、ありがとうインターナショナル主催の国際会議を開いた。「子どもに対する暴力をなくす」をテーマにしていた。

8月にNPO法人となった「おてらおやつクラブ」は、寺院への供物の「おさがり」を母子家庭を中心とする貧困世帯に分ける活動を行っている。2013年に奈良県の一住職が始めた活動には全国700以上の寺院が参加するようになっているという。

ただ、社会を分断しようとする力が予想以上に大きくなっていることにも注意を払うべきである。具体的行動は、例えば抗議の表明というだけでも十分意味がある。