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混迷する世界と宗教 平和への道指し示そう

2018年1月1日付 中外日報(社説)

明治維新から150年、第2次世界大戦敗戦から73年。この間の日本の歩みは、有力諸国が明確な目標を持ち前進している時には、それに後れぬように進もうとし、足取りも確からしく見えた。戦前は富国強兵、戦後は民主化と経済成長という目標があった。しかし各国の向かう方向がバラバラになり、混迷を深める時代、日本も方向を見失って足取りが怪しい。

欧米に追い付け追い越せと坂を上り続け、日清・日露の戦争を経てようやく追い付いたと感じ、さらに、日本こそ独自の国家体制を持ち、他にはない優れた国柄だという信念に引っ張られ、破滅的な戦争へと迷い込んだ。

第2次世界大戦後、冷戦の時代は米・ソが世界を引っ張っていくと感じられていた。資本主義・自由主義と社会主義の掲げる未来像が競い合っていたが、どちらも前向きであり、軍事力保持とともに科学技術の発展と経済成長という目標は共有されていた。

だが、「成長の限界」が反響を呼び、オイルショックに見舞われた1970年代以降、とりわけ80年代末の社会主義国家の失墜後、世界は次第に混迷を深めたように見える。90年の湾岸戦争時では米国大統領が「新しい世界秩序」を唱え、米国一極支配の危うさが懸念された。しかし今や「壁」をつくり、自国ファーストを唱える米国の大統領の言動を、世界は混迷の表れと見るようになっている。

ノーベル文学賞受賞者のカズオ・イシグロはインタビューで、人々に「壁」が強まる現代世界の混迷に向き合うよう促した。「知識を進化させ、科学的発見などをすることは、もちろんとても重要だ」が、それだけではない。「それらの発見をどう利用するかを決めなければならない」。そこに文学の役割がある。それは「私たちが作り出した障壁や壁を超えて、人間の感情を分かち合うこと」なのだ。

文学の役割についてのこの希望的発言は、宗教にも置き換えられる。宗教は壁をつくる後押しをすると疑われている。だが、対立を超え、「感情を分かち合う」ことに宗教本来の目標があるとも考えられる。ガンジーやマザー・テレサ、ダライ・ラマ14世はそうした宗教の在り方を具体化しようとした現代の宗教的賢者ではないか。

核攻撃に備え演習が繰り返される東アジアでは相互の間の「壁」を強める力が増している。だが、いくら壁を厚く高く築いても安全はない。壁を越え、感情を分かち合えるようになるその先に、平和への道がある。そうした道を指し示し、具体化していくための宗教の働きに期待したいところだ。