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宗教離れの時代に 開祖の心に返る姿勢を

2018年1月12日付 中外日報(社説)

今上天皇退位の日程が決まり、平成の年号は2019年4月末で終わることになった。西暦表示が定着した現在も、一部では年号によって時代の動きを顧みる風潮が残っている。その意味で今年は、平成時代を総括する年であるともいえる。

第2次大戦後の世界では、米ソの東西冷戦体制が続いたが、ベルリンの壁崩壊とともにその対立が消えた。その節目が昭和から平成への移行と重なったために、平成の年号に象徴される時代感覚を際立たせる効果があった。

平成とはどんな時代だったのだろうか。国内政治では、自民党が2度も野党転落を経験している。一党独裁でなく、連立で政権復帰を果たしたのだ。次の年号の時代には、さらに複雑な変化が起こるかもしれない。

経済の面では、リーマンショックなどが絡み、伝統を誇る大企業が姿を消し、外国資本の傘下に入るなどの事態が相次いだ。経済大国を誇った昭和の時代とは様変わりである。さらには製造工程の現場で、企業倫理を見失った現象が頻発し、国際的な信頼感が揺らぎ始めている。

学術面では、ノーベル賞の受賞が続くなど、大きな進歩が見られた。しかしこのレベルがいつまで維持されるだろうか。識者の一部には、国家の総力を挙げて努力する中国に追い越されることを憂慮する意見も出ている。

そして宗教である。残念ながらこの30年間は、沈滞の時代だったのではないか。仏教を中心とする既成宗教も、新宗教の諸教団も、一部を除いて信者の減少や宗教離れ現象に苦しんだようだ。

1964(昭和39)年の東京オリンピックの前後は、仏教系新宗教が急成長した時代であった。既成仏教各派は「檀家が奪われる」と危機感を抱き、家の宗教を守る体制から個人の信仰心確立へと布教戦略を切り替えた。高度成長による家計のゆとりが、各宗の連帯的努力と相まって、昭和の仏教界の危機は克服された。

平成の宗教離れについては、各教団がそれぞれ真剣に対応していることは分かるが、それが昭和のような連帯感にまで広がっている気配が感じられない。過疎過密の進行による地域差が絡んでいるのかもしれない。

極貧の中で開宗し、信者の心を捉えた教祖の子孫が、財産争いをしているという例がある。宗教者は、貧しい者への視線を失ってはなるまい。平成の最終段階にある今、既成宗教を含めて開祖の心に返る姿勢が求められてはいないだろうか。