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国法と宗教団体 国家管理の方向は回避を

2018年1月19日付 中外日報(社説)

国法と宗教法人・宗教団体自治規範の「対立、調整」をテーマとする調査、研究が波紋を呼んでいる。本紙は昨年11月29日付で報じたが、その後、日本キリスト教連合会や東京都宗教連盟、京都仏教会がそれぞれ、研究の趣旨に疑問を呈し、非協力の立場を決議していたことも明らかになった。

同研究は大石眞・京都大名誉教授らが国の科学研究費補助金を受けて2017年度から3年間の計画で進めている。基礎資料収集で全日本仏教会など日本宗教連盟所属5団体に協力を求め、各団体傘下の包括宗教法人に「自治規則集一式」の提供を依頼していた。

上記本紙記事によれば、京都の相国寺で行われた「説明会」で大石教授は、オウム事件後の宗教法人法改正で宗教法人の自治的事項に対する「国法の関与」が強まっていると分析した。「国法の関与」についての指摘はまさにその通りである。「宗教法人・団体の自治権と、適正な法人運営確保という要請の調整」を学者が研究テーマとすること自体を批判するわけでもない。しかし、文化庁宗務課職員を協力者に迎えて行う国の科研費補助研究としては、「信教の自由」の極めて微妙な領域に踏み込んでいる。

法律上の権利義務主体としての宗教法人は、その規則について所轄庁の認証を受ける必要がある。法人規則が国法と対立することは基本的に考えられない。「調整」が問題になるとすれば、「俗」に関わる宗教法人の規則ではなく、宗教の教義、「聖」の領域である。国家がイニシアチブを取る「調整」なら、宗教団体の聖域の管理、統制へとつながるのでは、という懸念が現れても不思議はない。

敗戦前、文部省には高等官の「宗務官」がいて、宗教団体の教義の調査、指導を担当した。戦後はアメリカ型政教分離体制になったが、アメリカでは国家が直接、宗教の信者数調査を行うことさえ連邦法で禁じている(文化庁『海外の宗教事情に関する調査報告書』08年)のに対し、我が国では早くも戦後4年目に文化庁が『宗教年鑑』を創刊している。

国家と宗教の関係、信教の自由についての国民の意識も彼我では明らかに異なる。とはいえ、専門知識を持つ研究者には、こうした事情も踏まえ、信教の自由・政教分離に関して疑惑の余地を残さない繊細な配慮が当然求められる。

今回の科研費研究は、その点を含め、宗教者側の疑念を晴らすことはできていないようだ。単なる一つの学術研究にとどまらない重い意味を持つ可能性がある。その結論や現実的影響を注視したい。