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平昌五輪の感動 啐啄の機がメダルに結実

2018年3月7日付 中外日報(社説)

先月に韓国で開かれた平昌オリンピックで、日本選手団は冬季五輪史上最多となる13個のメダル(金4・銀5・銅4)を獲得した。

右足のけがの痛みに耐えて、男子フィギュアスケートでは66年ぶりとなる連覇を果たした羽生結弦選手や、小平奈緒選手、髙木菜那・美帆姉妹らの活躍に沸いた女子スピードスケート陣、そして笑顔で激戦を勝ち抜いて初の銅メダルを手にした女子カーリングチームなど、トップアスリートらの最高のパフォーマンスが大きな感動を呼んだ。

多くの日本国民がその余韻に浸っている中、報道によると安倍内閣の主要閣僚から、この状況に水を差すような発言があったようだ。

発言の主は麻生太郎・財務大臣である。憲法改正をめぐり「ナチスの手口に学べ」、終末期医療に関して「さっさと死ねるようにしてもらわないと」等々、麻生氏はこれまでにも問題発言・失言を度々繰り返してきた。

今回は、平昌五輪での獲得メダル数が過去最多になったことについて、閣議後の記者会見で「コーチにカネをかけた結果」などと総括した。

高校野球でも有名監督のいる学校には全国から優秀な選手が集まるように、スポーツでは監督、コーチらの指導者の存在は非常に大きなものがある。三つの金メダルに輝いた女子スピードスケートのコーチはスケート王国のオランダから招聘された。

その意味で麻生氏の発言は正論だが、「コーチにカネをかけた」という表現は、過酷なトレーニングや練習を重ねて栄冠を手にしたアスリートに対していささか礼を失するものであり、国民に大きな感動を与えてくれたことへのねぎらい、讃える気持ちが感じられない。

いくら優秀な外国人指導者を迎えても、その下で高い目標を掲げて黙々と日々の努力、精進を重ねる選手がいなければメダルには結び付かない。

禅では、修行者が悟りを開く機が熟したのを見て、師家が一つの教示を与えて悟りの境地に導くことを啐啄の機という。修行者と師家の息がぴったり合った時に初めて悟りの境地に至ることができるのであり、そこには修行者と師家の深い人格的触れ合いが不可欠である。

そのことはスポーツの世界の指導者と選手の関係でも同じではないか。お金だけが全ての指導者の下では、国民を感動させるトップアスリートは育たない。