ニュース画像
倒壊した浄土真宗本願寺派法城寺の鐘突き堂(むかわ町)
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
時代を生きる 宗教を語る
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

自殺対策月間 危機は誰にでも訪れる

2018年3月16日付 中外日報(社説)

3月の自殺対策強化月間に合わせ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用して若者の悩みに応える取り組みを、全国13の民間団体が厚生労働省の委託を受けて行っている。

その一つ、NPO大阪自殺防止センターは心理学などを学ぶ大学生や大学院生らが相談員を務め、無料通信アプリ・LINE(ライン)を使って相談に応じている。センターは40年にわたり電話で相談を受けてきたが、10代の相談は全体の1%程度で、若者への対応が課題だった。

昨年の国内自殺(自死)者数は2万1140人。1998年以降、3万人を超えていたが、2010年から8年連続で減少した。その中で自殺する若者の数に大きな変化はなく、対策が問われている。若年層の死因1位が「自殺」の国は主要先進国で日本だけだ。

SNSに自殺願望を書き込んだ若者ら9人が殺害された昨年10月の神奈川県座間市の事件の後、政府は12月に再発防止策をまとめ、若者対象のSNSによる相談事業を今月の強化月間の取り組みに盛り込んだ。LINEによる相談は長野県など一部の自治体が昨年実施し、相談件数の増加など一定の効果が確かめられている。

電話や対面の場合と異なり、文字だけのやりとりでどこまで悩みをすくい取れるのかという課題はある。同センターは事例に応じ、専門スタッフによる電話相談に切り替えるという。SNSを窓口としてよりリアルな支援につなげていきたい。

ネット上での対応だけでなく、現実世界で生きづらさを抱える若者の居場所をつくることも大切だ。すでに寺院・教会や様々な民間団体が、家庭・学校外で学習や体験・交流ができる場を提供する活動を行っているが、資金や人手不足に悩む団体も少なくない。行政はもとより宗教界の支援が期待される。

教育や広報啓発活動も重要だ。文部科学省は自殺対策で、困難・ストレスへの対処法や危機に直面した時の援助の受け方を学ぶ「SOSの出し方教育」を掲げる。学校現場で十分行われなかった取り組みであり着実に進めてほしい。

政府は自殺対策強化月間や9月の自殺予防週間を国民の3分の2以上に認知させることを目指しているが、まだまだ不十分だ。

自殺は一部の人だけの問題ではなく自殺に至る命や暮らしの危機は誰にでも訪れる可能性がある。周囲の危機にいち早く気付き、声を掛け、話を聞く。自殺対策に果たす国民一人一人の役割の大切さを宗教界もアピールしてほしい。