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「国家意識」と教育 政治介入への深い懸念

2018年4月11日付 中外日報(社説)

文部科学省とのタイアップで製作されたアニメ映画「ちびまる子ちゃん」の「友達に国境はな~い!」というキャッチフレーズに関して、自民党の赤池誠章・参院議員が文科省に「国家意識なき教育行政」だとして「猛省を促し」たことが波紋を呼んでいる。

文科省の前事務次官・前川喜平氏が名古屋市の公立中学に招かれて行った講演の録音の提出を同省が学校側に求めた問題といい、自民党の公式サイトが「学校教育における政治的中立性についての実態調査」と銘打って「『子供たちを戦場に送るな』と主張し中立性を逸脱した教育を行う先生方」を通告するよう求めた(間もなくホームページから削除)件といい、このところ、政治と教育の関係がきな臭い。「モリ・カケ」だけが問題ではないのだ。

今年度から道徳が教科化され、「主権者教育」が推進されている。ともに「価値」に関わる教育だ。

教育基本法は第14条で教育の政治的中立性を、第15条で宗教的中立を定め、特定の政治的・宗教的価値観に偏った教育を禁じている。しかし、政治的中立は政治的・社会的状況によって左右され、どこを中立とみるかは時代、人によって異なる。自民党のHPは「子供たちを戦場に送るな」という主張が中立性を逸脱するという見方である。

宗教的中立に関しては、2006年の教育基本法改正の際に「一般的な宗教情操教育」に関する論争があり、「国籍のある宗教教育」なども提案されたことが思い出される。

道徳を「教科外の活動」から「特別の教科」に格上げすることも、選挙権年齢引き下げを踏まえた「主権者教育」もそれぞれ理念は大きな意味を持つ。後者は近年、欧米で行われているシチズンシップ(市民性)教育に相当するものだろう。

社会の一員としての自覚を育てる教育の重要性は言うまでもないが、普遍性より特殊性を強調する価値観に基づく「あるべき社会」像や「望ましい人間」像と結び付くと問題も大きい。戦前の「国体」論と不離一体の教育勅語を肯定するような立場に中立性の基軸を立て、そこからの逸脱を糾弾するような社会になることを多くの人は望まないだろう。

友情に国境はない、という考え方に教育行政の観点から過敏に反応した議員の発想に共鳴する人はごく一部だと信じたい。ただ、いま流行の「忖度」を引き出す力を持つ政治家の発言として無視するわけにはいかない。教育への政治介入は阻止しなければならない。