ニュース画像
江川会長を導師に営まれた世界平和祈願法要(大般若転読)
主な連載 過去の連載
エンディングへの備え
時代を生きる 宗教を語る
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

大相撲と女人禁制 聖と俗との調和の転機

2018年4月13日付 中外日報(社説)

1980年代後半と記憶する。西日本の由緒ある神社の例大祭で「女は下りろ」事件があった。舞台を組んで神楽が奉納された。各新聞社の記者が舞台の隅に上がり撮影を始めた。その一人は女性記者。当時はまだ、女性記者は少なかった。一瞬、奏楽が中断され、神官や世話役から「女は下りろ」の声が上がった。伝統の行事として神楽の舞台は、女人禁制とされてきたからだ。

翌日の各紙は「神社側、女性記者の取材を阻止」と報じた。ところが神社界機関紙の記述は「女性記者、伝統の祭事を中断させる」であった。いわば聖・俗両界の見解の対立である。

新聞各社としては、公開の行事の取材に女性差別に基づく制限を加えることは、報道の自由への侵害であると主張したものだ。だが神社側からすれば、宗教的信念による伝統は、信教の自由として守らねばならない。

神社の地元では、報道機関と神社界との険悪な関係が長期間続いたといわれる。

ある有名神社の海上祭典では、御座船と供奉船は女人禁制とされている。また祇園祭の長刀鉾の稚児は、祭事の期間中は母親と離され、男性の調理したもの以外は口にしない。仏教界の一部でも近年まで、女人結界が存在した。外国の宗教にも女性差別の慣習が見られる。

修験道のある幹部によると終戦直後、米軍の女性将校や将官夫人らが奈良県の洞川集落を訪れ、大峯山に登ろうとした。だが地元民が、大峯山の女人禁制は宗教的伝統によるものだと説明したところ、信教の自由は尊重すると言って引き返したという。

先頃、大相撲の地方巡業に際して、土俵上で挨拶していた男性市長が急病で倒れ、居合わせた女性看護師が駆け寄って救命処置を始めたら「女性は土俵から下りなさい」のアナウンスが行われたことが論議を呼んだ。

日本相撲協会の理事長は「人命に関わる事態に、女人禁制にこだわったのは適切でなかった」として、女性看護師に感謝の意を表した。しかし次の巡業地の女性市長が、土俵上からの挨拶を希望したのに、協会は土俵下からの挨拶を求めたというので、新たな論議を呼んでいる。

理事長が、緊急時には女人禁制にはこだわらぬと言明したのは一つの転機だ。例えば、部外者が土俵に上がるときは、男女を問わず特製の上履きを着け、直接土俵を踏まないようにするといった慣例は作れないだろうか。聖と俗の調和は早いに越したことはない。