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角笛と法螺 号令に踊らず冷静な認識を

2018年4月18日付 中外日報(社説)

ホラ(法螺)と呼ばれる貝がある。もともとは巻き貝一般の名称だが特に大型の巻き貝のこと。昔から身は食用に供し、殻は上端に穴を開けてラッパのように吹き鳴らした。吹奏貝は南アジアの海洋民族からアメリカにかけて広く分布していたようである。

ところでホラという名称は意外な広がりを持っている。古代中央アジアなどの牧畜民族の間では獣角が――羊の巻き角も――ホラとかコラとか呼ばれていたのである。そこでは角笛が作られたが、牧羊や狩猟、場合によっては戦闘で用いられた。角または角笛は西洋に渡るとラテン語ではコルヌ、英語ではホーン、ドイツ語ではホルンと呼ばれた。それが発達したものが管弦楽で用いられる楽器ホルンである。

さて、ホラとはもともとは巻き貝のことか、あるいは巻き角のことか、どちらからどちらに転用されたのかは分からないが、いずれにせよ日本のように牧畜より漁業の方が盛んな所では、大きな巻き貝がホラと呼ばれ、ホラ貝が角笛のように用いられたのである。日本ではホラ貝は山岳修験者が使うので有名だが、祭儀やかつては軍事にも用いられた。またホラは大きな音を出すので、「法螺を吹く」とか「大法螺」というような転義が生じた。

「つのぶえ(角笛)」はもと牧畜や狩猟などで用いられ、さらに様々な用途があって、音の出し方や意味も多様だが、いずれにせよ「さあ集まれ」とか「さあ始めよ」というような、大勢の人――主として仲間――の行動を促す合図ないし号令であった。そのせいか「つのぶえ」といえば何やら進軍ラッパのようなイメージが付きまとうのである。

これで連想するのは、かつては忠君愛国、富国強兵という「つのぶえ」と帝国軍隊は絶対不敗だという「法螺」が結び付いていたことだ。戦後の高度成長期には「所得倍増、働け働け」という「つのぶえ」を日本の経済力世界一という「法螺」が支えていた。「革命」と「理想社会」も同様だろう。老人たちはもう国是や世論に踊らされるのはこりごりだと身に染みて弁えているが、若者はどうであろうか。

ところで、近頃政府は防衛力増強とか憲法改正とかしきりに「つのぶえ」を吹いているが、我々がなすべきことは、羊のようにおとなしく従ったり、勇ましい号令に踊らされたりすることではなく、正確・冷静に事実ありのままを認識した上で、あくまで平和への方向を模索し、平和を守ることではないか。