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常識と非常識 政官界のモラルを問う

2018年4月25日付 中外日報(社説)

旧自治省出身の官僚で、復興庁の事務次官などを務めた岡本全勝氏は約10年前から、役所への来訪者との用談が済むと、相手をエレベーターの乗り場まで、時には玄関まで見送るようになった。それまでは自席で迎え、自席で別れの挨拶をしていた。

それが“非礼”であると気付いたのは、内閣府大臣官房審議官として経済政策を担当した時だという。岡本氏の方から経団連会長をはじめ財界の要人を訪ねる機会が増えた。その時、相手は必ずエレベーターまで見送ってくれた。

「私ごとき若輩に」と恐縮すると、相手は「岡本さんは変なことを言うねえ。お客さんをお見送りするのは当たり前でしょう」と言い返された。それが社会の常識なのだと気付いた。役所の常識は社会の非常識だった。

予算編成期や国会開催中、中央省庁の職員は多忙を極める。つい自席に座ったまま客を送迎しがちになる事情も分からないではない。しかしそれが“非礼”であると気付いたのは良いことだ。他省庁の官僚もそのことに気付いていると信じたい。

岡本氏は、民間人との交流の中で官僚の非常識に気付き、自ら身を正した。しかし昨今の政官界を見ると、自分たちの非常識ぶりを指摘されながら、一向に改めようとしない政治家や官僚が少なくないとの印象を受ける。

決裁済みの公文書が、有力政治家の不利を招かないように改ざんされていた。廃棄されたはずの自衛隊日誌が、突如として姿を現した。大学新設の陳情に上京した地方公務員が、官邸訪問の記録を残しているのに、首相側近は会った記憶はないと突っぱねる。

いずれも、保身と栄達を図る官僚が、権力ある政治家に迎合していることが露骨にうかがえ、各種の世論調査でも指摘されているのに、改まる気配はない。民間の組織では通じない非常識が、政官界にはびこっている。

さらには最有力官庁の事務次官が女性記者から取材を受けた際、まともな答えをせず、セクハラ発言を繰り返したと、週刊誌に報じられた。次官は結局は辞任したが、いったんは開き直った。官庁側が女性記者に名乗り出るよう求めたり、官僚が週刊誌提訴を示唆したりと、強気で切り抜けようとした。

さすがに与党の議員からもこうした非常識を批判する声が高まってきたが、政官界の人々の道徳観念が、このような形で問われているのは悲しいことだ。岡本氏のような謙虚さを学んでほしいものだと思う。