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若者の宗教意識 20年間の調査が示すもの

2018年5月11日付 中外日報(社説)

昨今のように社会が目まぐるしく変化する時代には、若い世代の信仰心や宗教への関心などは、どのような影響を受けるのか。2月に國學院大日本文化研究所から刊行された『学生宗教意識調査総合分析(1995年度~2015年度)』は、長年にわたるアンケート調査の結果を踏まえ、非常に興味深い指摘を行っている。

分析対象となっている調査は前記の20年間に12回にわたって行われたものである。調査で集まった有効回答の総数は、6万6千余に上る。昨年、12回の調査報告書を合冊にしたものが、同研究所から刊行された。今回の報告書は20年間の変化を分析し、クロス集計を行い、自由回答の内容を紹介している。ほぼ同じ内容で4回実施された韓国での調査結果との比較もなされている。

調査が開始されたのは、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起こった年である。またインターネットが急速に大衆化し始めた年でもある。20世紀末から21世紀初めにかけてはグローバル化が加速し、日本国内の宗教の多様化が進んだ。

20年間の変化で注目されるのは、学生の間での信仰を持つ者の割合や、初詣や墓参りなどをする割合が、微増傾向にあるという点である。宗教関係者から若い信者が少なくなったという声を聞くことがあるが、これは多分に若い世代の絶対数の減少が関係していると考えられる。集会に来る人たちが高齢化しているのは、宗教だけの話ではないからである。

90年代に注目された散骨・自然葬であるが、自分の葬式をそのような形式でやりたいという割合はいくらか減る傾向にあることが分かる。自分は仏式の葬式を望むとする割合が、非宗教系の大学の回答者では2010年代に少しだけ増えているのも興味深い。「家の宗教」という観念は著しく薄れているようだが、人生儀礼に宗教的な要素を望む気持ちは薄れているわけではないようだ。また国内に増えつつあるモスクに関する考えは、テロなどの報道に大きく左右されていることなども分かる。

現代宗教についての論評は、予め論者に備わったフレームからなされがちである。そのときどきの出来事にも見解が左右される。しかし数十人の研究者が協力して行ったこの調査は同じスタンスを保ち実施された貴重なものである。

分析結果のポイントは、巻頭の論文で12点ほどまとめられているが、世紀の変わり目を挟んで実施されたこの調査にはそれ以外にも、若者の宗教意識や行動を探るヒントが多く含まれる。