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災害時の施設活用 地元と連携、平時から

2018年5月23日付 中外日報(社説)

東日本大震災で、自治体の指定避難所ではない寺社・教会などの宗教施設が多くの被災者を受け入れたことはよく知られている。

震災後、寺社などと災害協定を結ぶ自治体が増えるなど、大規模災害時に宗教施設を地域の防災拠点として活用するための取り組みが各地で進んでいる。

東京都宗教連盟はこのほど、都内の宗教施設を災害時に有効活用してもらおうと、約4千の施設の耐震性や防災用の備蓄品の有無等の情報をまとめたデータベースを作成することを、都と協議して決めた。連盟の幹部が昨秋、都庁を訪れ、災害支援の協力を申し出ていた。

首都直下型地震が起きると、都内では92万人の帰宅困難者が発生すると予想されているが、一時滞在施設の確保は目標の3分の1程度にとどまっているという。宗教界と自治体によるこうしたデータベースの作成は初めてとされ、東京をモデルケースとして同様の動きが各地に広がるかもしれない。

都市部では災害時の帰宅困難者の受け入れ先確保は重要な課題だ。年間約5千万人の観光客が訪れる京都市は、約37万人(観光客13万人、就業・通学者24万人)の帰宅困難者の発生を想定。観光客を含めた「京都モデル」の帰宅困難者対策を進め、特に観光客の多い地域にある寺社や、寺社が運営する会館などが避難広場や滞在施設に指定されている。

仏教界では昨年、日蓮宗が防災アプリの運営会社と情報提供の協定を結んだ。全国の宗門寺院にある井戸を災害時に開放する「災害支援いのちの井戸」事業の一環で、災害時に協力が可能な寺院の情報を防災アプリ「全国避難所ガイド」に提供。現在、約千カ寺が登録されており、他宗派にも登録を呼び掛ける考えだ。地域と結び付きの強い寺社は、長い歴史の中で近隣住民を救済する公助の役割を果たしてきたし、今後もそれは変わらないだろう。

ただ建物の提供や物資の備蓄などハード面での協力は可能でも、災害時の受け入れ態勢や避難所の管理・運営などソフト面の対応を不安視する寺社は多い。建物の耐震性や施設開放後の二次災害の問題など受け入れをためらう要因もある。

こうした不安を解消するため自治体側は費用面を含めた柔軟な支援、寺社側は自治体や地元住民との日常的交流、連携が不可欠だ。自然災害が多発し、大規模地震への備えが指摘される中、個々の寺社にとどまらず宗派・教団や地域の宗教界レベルでの取り組みが期待される。