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平和な日本海を 問われる日本の当事者性

2018年7月25日付 中外日報(社説)

日本海を「平和の海に」と誰もが願う。韓国と北朝鮮との友好が、その必須要件であることも言をまたない。世界を驚かせた南北の接近と4月の首脳会談は米朝首脳会談を実現させ、一触即発だった朝鮮半島の緊張を和らげた。

曲折はあるだろうが、かなたに希望の灯も垣間見える動きが進行中だ。特異な個人崇拝の国北朝鮮への疑心は晴れず、日本ではこの南北融和を歓迎するのがはばかられる雰囲気が今も漂う。だが、我が国がこの地域の不幸な過去に深く関与した当事国であることも忘れてはなるまい。東アジアに歴史の転機が来た感がある中、メディアも対立でなく平和を追求する視点からの冷静な報道が望まれる。

文在寅・韓国大統領と金正恩・朝鮮労働党委員長が朝鮮戦争の休戦ラインで握手する映像に「日本人の私も胸が熱くなった」という投書が、ある全国紙に載った。北の暴政はさておき、今は70年に及ぶ民族の分断を超え二人の主体的な判断と行動で平和へ踏み出した「胆力」に心が動いたらしい。

一方、安倍晋三首相は喫緊の拉致問題を「私が司令塔になり全力で取り組む」と被害者家族に壮語してトランプ、文両大統領に首脳会談で提起するよう依頼した。こうした首相の姿勢に対し、評価は辛口になる。首相は金委員長と「直接協議したい」とはいうものの、覚悟と見通しはあるのだろうか。

そもそも首脳会談は、双方が自己の政治生命と国益を懸けて行うぎりぎりの交渉だ。元外務官僚で小泉純一郎・元首相の訪朝に関わった田中均氏は「普通の国なら自国民の生命の問題の解決を他の国に頼むというのは恥。自ら交渉せずに解決がどこかからもたらされるようなことは考えられない」という(『世界』7月号)。

米朝会談で提起されたという拉致問題の北朝鮮の反応は不明のまま。外交での第三者依存の危うさは焦点の「非核化」問題にも表れた。金委員長はトランプ大統領に「完全な非核化」を約束したが、具体的なことは今後の協議待ちとされる。言動が予測不能なトランプ大統領は、北朝鮮の核・ミサイルが米国にとって「無害化」される保証でお茶を濁す懸念さえ指摘され始めた。だが、日本は核を持った北朝鮮とは付き合えない。

結局、日本は米国の情報に偏りがちなメディアの報道も含めて過度な対米依存を脱し、戦後補償をカードに北朝鮮と主体的に向き合うしか活路はないようである。ただ、その時は武力ではなく仏教が説く寛容と共生の心を持続する覚悟は固めておかねばならない。