ニュース画像
田島の風外窟を訪れ、風外慧薫の生涯を学ぶ曹洞宗禅文化の会会員ら
主な連載 過去の連載
エンディングへの備え
時代を生きる 宗教を語る
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

今何をなすべきか 平和への祈りとともに

2018年8月22日付 中外日報(社説)

比叡山宗教サミット31周年で「世界平和祈りの集い」が先頃開かれ、20年や30年という「節目」ではない例年と同様に、決まった次第に沿った祈りの儀式が粛々と行われた。挨拶などで貧困問題や続発する災害などへの言及はあったが、集いとしての「行動提起」がない一方で、宗教者の青少年による「平和への思い」の作文発表が大きな共感を広げた。

女子中学生が、「平和」とは戦争がないだけではなく苦難の少ない社会であること、貧困にあえぐ人々に自らが胸を痛める気持ちを素直に述べ、男子高校生は世の中を変えるために「私に何ができるのか」と鋭く問うた。「私に」と自己の問題に引き付けた力強い意見を、コメント役の戸松義晴・全日本仏教会事務総長は「ここにいる人、全ての人が問われている」と受け止め、改めて平和を祈願し、何ができるかをそれぞれで考えるために、「プログラムにはないがいま一度、一緒に祈りましょう」と呼び掛けた。参加者全員が心を一つにして応じた。

来賓の黒住宗道・黒住教主は祝辞で異例ながら、自らが事務局長を務める岡山の諸宗教者の団体による西日本豪雨被災地での支援活動を具体的に紹介した。仏教やキリスト教、イスラームや新宗教まで幅広く参加するこの団体「人道援助宗教NGOネットワーク」は災害発生直後からメンバーが状況把握に走り、特に被害が大きかった岡山県倉敷市真備町の小学校の避難所で支援に入った。

「一人も関連死者を出さない」を目標に700人もの避難者に寄り添い、要望や健康状態を聞き取って、単に炊き出しをするだけでなく「栄養補給に最適で、酷暑でも安全で、さっぱりおいしく食べられる」を皆で考え抜いた末に、加熱した野菜の酢・塩漬けの提供を決めた。「ピクルス・デリバリー・プロジェクト」と銘打って一般にも食材提供など協力を呼び掛け、8月末まで毎週3回配給を続ける。「集い」参加者でも普段からボランティアなどに関わっている人々からは、この取り組みに「被災者の身になったきめ細かい対応」と共鳴する声を聞いた。

毎年の集いで必ず朗読される31年前の「比叡山メッセージ」では「平和のために祈ることは、平和のために働くこと」「まず祈りから始めなければならない」と、祈りの次に「行動」をなすことをうたっている。今年参加したある宗教者が「来年は祈りと共に、それまでの一年に自分が何をしたかを振り返って話し合うことにしてはどうか」と話したのが心に響いた。