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看護の倫理 品位ある行動、宗教者も

2018年9月7日付 中外日報(社説)

横浜市神奈川区の大口病院(現横浜はじめ病院)で、入院患者3人を中毒死させたとして、このほど元看護師の女性が逮捕された。医療従事者への信頼を大きく揺るがす事件であり、関係機関は一刻も早く全容を解明し、再発防止につなげてほしい。

大口病院は終末期の患者を積極的に受け入れていた。容疑者の元看護師は、家族への説明が苦手で、自分の担当時に患者が亡くなるのが嫌だったなどと動機を語っているという。

終末期医療に携わる医療関係者からは「あり得ない」「看護師になってはいけない人だった」と事件の特異性を強調する声が上がる。横浜地検は近く、容疑者の精神鑑定を行う方針だ。事件の背後に何があったのかを慎重に明らかにしてほしい。

看護師は疾病からの回復と予防、健康づくりに携わる医療専門職として、医師らと同様の高い倫理観が求められる。医師の倫理をうたった「ヒポクラテスの誓い」に倣い、19世紀に米国で「ナイチンゲール誓詞」が作られ、日本でも看護学生らが胸に刻んできた。日本看護協会は2003年、それまでの「看護師の倫理規定」を見直し、「看護者の倫理綱領」を発表。看護師一人一人の具体的な行動指針とした。

前文と15の条文からなり、各条文に解説が付く。第1条で人間の生命、人間としての尊厳・権利の尊重を述べ、以下、平等な看護の提供や患者との信頼関係の構築、継続的な自己研鑽、品行を高く維持すること、環境問題への責任、より良い社会づくりへの貢献などがうたわれている。

看護師は患者の一番身近にいる医療者として、患者を常に見守り、寄り添う存在だ。求められる倫理観は宗教者にも通底するものがある。2年前に発足した日本臨床宗教師会は倫理綱領と倫理規約(ガイドライン)を制定し、会員に遵守を呼び掛けている。綱領では、個の尊厳の尊重や適切な振る舞い、自己向上義務などを定め、看護師の倫理綱領と重なり合う部分も多い。

仏教界では各宗派の宗憲・宗制などで僧侶の本分が簡潔にうわれている。仏祖・宗祖への奉仕、行学二道、布教教化への専念、宗派・本山・寺院の護持発展などだが、別に倫理綱領まで設けている例はまずないだろう。

寺院や僧侶の在り方に社会の厳しい目が向けられる中、各宗派では教師の教育制度の見直しなどに着手している。仏教者の倫理はいかにあるべきかを改めて問い直す機会にしてほしい。