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「内向き」への危惧 未来志向は歴史無視ではない

2018年9月12日付 中外日報(社説)

2017年の日本の1人当たりGDPは世界で第25位、「ジェンダー・ギャップ指数」は114位である。報道の自由度ランキングは72位だ。大学のランク、企業のランクも凋落気味である。日本は素晴らしい国であるという書籍やテレビ番組は増えたが、日本社会の文化力は弱まっている可能性もある。何よりも次第に内向きになっている傾向が気になる。

訪日外国人は2002年に500万人を超え、17年には2700万人余となった。他方、出国する日本人の数は21世紀になり1600万人から1800万人の間を推移し停滞気味である。中高年では出国する日本人は男性の方が多いが、若い世代では女性の方が多い。

外国に行けば多様な考え方や文化に出合う。日本を訪れる外国人は日本の宗教にもけっこう関心を持っている。神社の絵馬にも英語、中国語、韓国語、その他の言語で書かれたものを多く見かけるようになった。布教とは別の形で日本宗教にも触れ、日本文化をその人なりに感じると考えられる。

そうした観点からすると、最近の日本に見られる内向きの言説の増加は憂うべきだ。単に内向きであるだけでなく、近隣諸国への侮蔑を隠さない言説も目立つ。とりわけ中国、韓国への侮蔑的言説が政治家、小説家を含めて、ネット上に少なからず見受けられる。

そうした人の中には、中国や韓国と違い東南アジアは全面的に親日的と考えている人もいるようだが、それは歴史に無知だからである。東南アジア諸国が日本との友好を目指しているのは確かだが、過去の日本軍の行為を忘れているわけではない。例えば、3年前に死去したシンガポールの元首相のリー・クアンユー氏は、第2次大戦中に危うく日本軍に殺されかけた人である。中国系住民がスパイと疑われ、5千人とも数万人ともいわれる一般人が集められ虐殺された事件がある。リー氏は途中で何かおかしいと感じて逃げ帰り、身を潜めて辛うじて助かった。日本人に対して敢えて触れないが、シンガポールの人はほとんどが知っている歴史だ。

自分と異なる文化を受け入れ理解しようとする姿勢が弱まることは、非常に危険な兆候であることは歴史が物語っている。歴史に学びたくない人たちが歴史修正主義の道を選ぶと、事態はさらに厄介だ。宗教者が平和を目指し、共生可能な社会を目指すというなら、歴史修正主義への加担は論外なはずだが、残念なことに一部にはそうした傾向も見受けられる。それを指摘し何が問題かを議論するのも、心ある宗教者の務めである。