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ネット時代のモラル 問われる自浄努力

2018年10月17日付 中外日報(社説)

他者、特に敵と見なした者への攻撃ほど心理的にたやすいものはない。過激でも味方からは大目に見られるから、事実無根の非難や侮蔑も平気で行う人が現れる。ネット時代には匿名発言も比較的容易になったので、この傾向には拍車がかかっている。とはいえ、ネット時代はこうした言説が従来とは異なるルートで拡散するので、攻撃者が直ちに批判を浴びる側に回ってしまう。

9月末には沖縄県の知事選挙があったが、選挙戦では玉城デニー候補に対する罵倒、事実無根の言説がネット上にあふれた。だが、それはすぐ自分に返ってきたりしてもいる。事実無根のデマをツイートしたとして、強い批判にさらされた公明党の国会議員もいる。

靖国神社宮司(当時)が天皇、皇后両陛下の慰霊活動や皇太子妃の思想まで批判するような内容の話をしたのは、6月に行われた内部の会議だった。ところがこの話を録音した内容が10月初めになって週刊誌に掲載され、またネット上で宮司の肉声が公開されたため多くの人が知ることとなった。

批判の内容は、両陛下の慰霊は靖国を潰す結果になるとか、慰霊してもそこに御霊はいないというかなり思い切ったものである。肉声がネット上で公開されるというのは、発言をどうにも否定できないということを意味する。

問題はこうした事態が起きたとき、どのように自浄作用が働くかである。むろん正しい行為をしたと認識するなら、批判への反論をすればいい。しかし、もし不適切であったと思うなら、速やかに対応しないと、ネット時代には問題は思わぬ方向に広がりかねない。

9月末から宗教研究者らの間で一つの問題がネットで議論になった。ある私立大の教員が科学研究費補助金による研究の一環として、公安調査庁の観察処分対象になっている「ひかりの輪」の関係者を招いて研究会を行った。

そうした研究会をやること自体に問題はないだろうが、研究会の案内で、申込先の電子メールが「ひかりの輪」のメンバーのアドレスになっていたのである。これに対し、カルト問題に取り組む研究者やジャーナリストから批判の声がネット上に出された。参加希望者は、「ひかりの輪」の関係者に個人情報を送る仕組みだったわけである。これは個人情報、調査対象との距離、その他の問題において、非常に認識が乏しい行為と言わざるを得ない。

ネット時代にはこうした比較的小さな問題でも自浄努力が求められる。宗教研究者全体への信頼性を失うことにつながりかねない。