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議論が足りない 国民統合の象徴天皇像

2019年1月9日付 中外日報(社説)

国民統合の象徴としての天皇像を模索されてきた天皇陛下が4月で退位し、平成が終わる。陛下は昨年末、85歳の誕生日の記者会見で、自分の立場を受け入れ、支え続けてくれた国民に「衷心より感謝」すると述べられたが、陛下が問い掛ける、あるべき象徴天皇像について国民の側は的を射た答えを返していないように思う。

2016年8月、陛下は「私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました」と述べて、生前退位を望まれた。国民統合に重点を置く象徴天皇像の在り方を、ご自身のこれまでの努力に重ね合わせて国民に問い掛けたとされる。象徴天皇制の安定的な継続を願うお気持ちも示された。

随所に分断、亀裂が生々しい世にあって陛下は美智子さまと数々の福祉、療養施設などを慰問し、災害の被災地を見舞われてきた。現場に身を置いてこそ国民と心が通じ合う回路が生まれ、精神的・霊的一体性を築ける。高齢でそれが無理なら譲位するのが国民と苦楽を共にする天皇本来の姿で、伝統にも合致する、という理にかなったお考えだと評価されている。

だが、生前退位は天皇の神聖性の否定という戦前回帰の復古主義的主張が政治的に勢いを増す中、生前退位を認めず、皇統の維持にも懸念がある皇室典範の改正ではなく、一代限りの退位という特例法が作られた。胸のつかえが取れない理由の一つがこれである。

もう一つ、国民統合の最も危うい位置にいる沖縄の問題がある。

天皇陛下が戦争体験の継承にこだわり、憲法の平和主義を固く支持しているのは周知のことだ。戦後、GHQは昭和天皇の誕生日にA級戦犯を起訴、陛下の誕生日の12月23日に処刑した。世界でも敗戦国とされた国の王室は全て廃止されており、そうした冷厳な歴史を熟知する陛下が強い平和志向を持たれていることに何ら不思議はない。

度重なる戦跡への慰霊の旅はその表れだが、特に大戦中、本土の「捨て石」にされた沖縄への訪問は皇太子時代も含めて11回に及び、今も続く苦難の歴史に深く心を寄せられてきた。しかし、安倍政権の強引極まる米軍辺野古基地移設に見るように、本土は基地に苦しむ沖縄に冷淡だ。

象徴天皇と国民の関係を割り符に例える言説がある。心が通じ合わねば割り符が合わない。皇室も国民も不幸な時代の再来である。