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行き悩む原発輸出 福島第1に何を学んだ

2019年2月1日付 中外日報(社説)

日本の原子力産業の“御三家”と呼ばれるのは日立製作所、三菱重工業、東芝の3社である。その一つの日立製作所がこのほど、英国での原発建設計画を凍結すると発表した。安全対策費や、将来の諸経費を勘定に入れると、赤字は必至と見通したためらしい。

政府・業界はこれまで原発の海外売り込みに努めてきたが、アラブ首長国連邦への輸出では韓国に敗れ、ベトナムとリトアニアでは住民や国会の反対で立ち消えとなった。フランスとの新型高速炉共同開発計画が凍結された後、トルコ、英国、インド3国への売り込みを目指したが、三菱重工業のトルコ受注は活断層の発見などで絶望的。さらに今回の英国の凍結で、手詰まりの感じだ。

2011(平成23)年3月の東日本大震災で被災した東京電力の福島第1原発は、廃炉と決まったのにこの8年間、燃料の取り出しが進まないなど、作業が難航している。それにもかかわらず政府・業界は「日本の原発は安全」として商談を進めてきた。

英国・トルコへの望みが事実上絶たれた現在、残る交渉相手はインドだけである。安倍晋三首相はインドのナレンドラ・モディ首相との会談を重ねているが、廃炉もままならぬ福島第1の現実をどう見ているのだろうか。

敗戦後の日本は、連合国から原子力研究に取り組むことが禁じられていた。1952(昭和27)年の講和条約発効後、学界や電力業界では「原子力平和利用」で諸外国に後れを取ってはならぬとの機運が高まった。

その年10月の日本学術会議の総会では、学界の総意として政府に、平和利用推進のための調査審議会新設を進言しようとする決議が採択されようとしていた。

2014(平成26)年1月7日付本欄に記したように、この時、会場から「待った」の声が出た。広島で被爆・負傷した原子物理学者の三村剛昂博士(故人)からである。「原子力研究は核兵器製造に直結する。歯止めが必要だ」との訴えが、学者たちの良心を動かした。同総会では、原子力研究に当たり「公開・民主・自主」の三原則を守るとの付帯条件付き決議が行われ、日本は核兵器開発には関与せぬことが決まった。歴史に学びつつ自らの被爆体験を語る姿勢が、三村発言を支えた。

翻って、現在の政界・業界人の態度はどうか。英国への売り込みを断念した直後に、日立製作所の幹部は「日本国内でもう一度基盤固めをする」と語ったそうだ。福島に学ぶ態度が感じられないのが気に掛かる。