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「命」を考えるジャズミュージシャン 坂田明さん(70)(1/2ページ)

2015年3月4日付 中外日報(ほっとインタビュー)

人間の役割って何だろう

「楽器を吹き続けることは修行」。修行の先にあるのは自分自身の人格の陶冶と、大自然・社会の中で自分の役割を見いだすこと。その考えは世界諸民族との出会い、ヒマラヤやアマゾンの聖なる地で演奏することで培われてきた。ミュージシャンは演奏して人に聴いてもらい、役割を果たすことでミュージシャンになっていく。

(甲田貴之)

ジャズミュージシャン 坂田明さん
サックス、クラリネット奏者。1972年に「山下洋輔トリオ」に参加して、国内外のジャズフェスティバルに出演。ミジンコ愛好者としても知られ、東京薬科大生命科学部客員教授、広島大大学院生物圏科学研究科客員教授などを務める。寺社でも数多く演奏している。

東日本大震災の後、鎮魂のための演奏をされましたね。

坂田2011年6月に福島県南相馬市の萱浜で神道青年会相馬支部などの主催で鎮魂祭が営まれ、そこで「浜辺の歌」(成田為三作曲)をサックスで演奏した。恐ろしい津波が引けば、海は何事もなかったように穏やかに戻る、そんな浜辺で演奏するにはこの曲しかないと思った。神や霊に対して何かしてほしいとかそういう意味ではなく、自然の前でただ慎しみ畏み祈るだけ。もちろん、亡くなった人の魂に向けているが、一方で残された人に自分の音がどう届くかが大切。私も以前、妹2人と両親を亡くした経験を持っており、死んだ人の分も自分が生きるしかないと思ってきた。

自分の魂が震える音じゃないと人の心には響かない。苦しんでいる人たちにとって生きる力になるような音を届けたい。鎮魂演奏は自分にとっての修行だった。

坂田さんにとって祈りとは。

坂田アイヌ民族との出会いが大きい。1983年に漫画家の赤塚不二夫先生のプロデュースで、北海道の屈斜路湖で開催されたジャズフェスティバルに参加したことを機に、アイヌの人々と関わるようになった。彼らは生活の様々な場面で神に祈る儀式「カムイノミ」を行う。そうした暮らしに触れることであらゆる所に神がいるという考え、八百万の神々や仏教の山川草木悉皆成仏の教えが自分の中に入ってきた。彼らは恩恵を求めるのではなく、見守ってくださいと神々に言う。私にとっての祈りの根底にはアイヌの人々の生き方がある。