ニュース画像
避難所となった当時を振り返りながら講話する本川住職
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
トップ> ほっとインタビューリスト> 医師 中村仁一さん

<医療信仰>を鋭く批判する医師 中村仁一さん(75)(1/2ページ)

2015年4月29日付 中外日報(ほっとインタビュー)

治らぬ病、上手に付き合い

医学の限界について語り続けてきた。30年ほど前に京都仏教青年会(現薄伽梵KYOTO)と始めた「病院法話」は医療と仏教連携の先駆けになった。

(丹治隆宏)

医師 中村仁一さん
1940年、長野県生まれ。財団法人高雄病院院長、理事長を経て、2000年から社会福祉法人老人ホーム「同和園」付属診療所所長。著書の『大往生したけりゃ医療とかかわるな』(幻冬舎)はベストセラー。

「病院法話」のきっかけは。

中村私自身が、夜中に飛び起きるほどの不整脈に見舞われました。40代のことで、まだ先も長い。すると、生きるための支えが欲しくなりました。医学にはもともと限界を感じていたので、それなら宗教だと。最初は聖書を斜め読みしたんですけど、どうもなじめない。次に仏教に向かったのですが、実は私にとって仏教の印象は暗かったんですよ。死後の世界、極楽など説かれても、生身の人間に役に立つものか、と思っていました。

ですが、仏教に関連する書物を片っ端から読み進めるうちに、「生老病死」は「四苦」、苦は「思い通りにならないこと」とあって、「ああ、そうか」と納得したんです。思い通りにならないことを、思い通りにしようとするから苦しくなるわけで、「病気と一緒に生きていくしかないか」と諦めれば、受け入れることができる。「苦」という言葉に出合って、生きるのが楽になったんです。こちらが決め付けて、勝手に苦しくなっていたのです。とらわれて、自分で不自由になっていたということです。

病院で患者は毎日、病気と格闘して苦しんでいる。四苦という教えがあることを、入院患者にも伝えたかったというのが、僧侶による「病院法話」のきっかけなんです。格闘するのをやめれば、楽になれるはずだと思いました。

病気には治る病気と治らない病気があるのに、私たちは病院に行けば何とかなると思っている。結核に代表されるように感染症の場合、いい薬が出て完治が望めるものもあります。ですが、生活習慣病の場合、治らないんですよ。生涯上手に付き合ってもらうしかない。

一方で、医学は新しい機器が次々に出るなど日進月歩していて、患者は治ると思って病院に来る。病気と縁が切れるわけではないということが、分かっていないんです。医療信仰が肥大化しているということです。