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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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現代社会の深層に斬り込む作家 吉岡忍さん(66)(1/2ページ)

2015年6月17日付 中外日報(ほっとインタビュー)

「花は咲く」は現実を隠す

数々の事件・事故の真相に迫る綿密な取材力と表現力はノンフィクション作家の中でも群を抜く。現在は東日本大震災、原発事故の深層を求めて取材を続けている。

(河合清治)

作家 吉岡忍さん

1948年、長野県生まれ。早稲田大政治経済学部中退。在学中から執筆活動を開始し、ベトナム反戦運動に参加、米軍脱走兵の逃亡を支援した。87年、『墜落の夏』(新潮社)で講談社ノンフィクション賞受賞。

東日本大震災から4年3カ月ですが、振り返ってみていかがですか。

吉岡私が被災地に入ったのは震災が起きてから4、5日後でした。まず、津波被災地を取材し、3月下旬に福島の原発事故の20キロ圏に行きました。線量計の針が振り切れてしまう高汚染地帯です。

当時、言葉もないという状況でした。表現のしようがないという意味ではなく、うっかり言葉を発したら、巨大な現実の意味を取り違えてしまう気がしたのです。長年この仕事をしている者としての本能ですかね。

約200日間滞在し、現地リポートなどいろいろ執筆しましたが、それは見聞きしたことだけで書けますから。でも、感じたこと考えたことを下手にまとめてしまうと、ずしっときた衝撃が、こぢんまりまとまってしまう気がして、しばらく時間を置きたいと思い、かと言って現場は離れないということを繰り返してきました。

今は2カ月に1度、被災地に足を運びながら、やっと書けるような気持ちになったところです。

震災後の日本の社会を覆う雰囲気や論調については。

吉岡東北人は我慢強いとか、粘り強いといわれますが、その背景にある歴史はあまり語られません。奈良時代に東大寺の大仏造立のため、岩手から金が採掘されたのをきっかけに、蝦夷討伐、入植、さらには戊辰戦争などを経て、中央に従属させられ、ついには貧困と過疎につけ込まれ、原発を押し付けられてきた土地柄です。

そんな歴史さえ知らないまま、「花は咲く」(復興支援ソング)ですからね。「日本は一つ」「一つになって助け合おう」となれば、歴史や原発の矛盾など、全てが隠されてしまいます。これは悪しき「宗教」なんですよ。慈悲とか善意とかで覆ってしまうと、ざらざらしたリアリティーが消し去られ、我々自身の来し方行く末すら見えなくなってしまうのです。

本来、宗教は、命の尊さ、有り難さを教え、正しい生き方に導くものでなければ。