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宗教は社会を支える柱と語る思想家 内田樹さん(64)(1/2ページ)

2015年7月15日付 中外日報(ほっとインタビュー)

「戦後問題」は「宗教問題」

戦後70年――。日本はあの敗戦から何を学んだのだろうか。「戦争のできる国」へ進もうとしているこの国の現状に鋭い批判の目を向ける。

(西谷明彦)

思想家 内田樹さん

1950年、東京生まれ。東京大文学部卒。東京都立大大学院博士課程中退。神戸女学院大名誉教授。専門はフランス現代思想、教育論、武道論など。合気道師範で武道と哲学の学塾「凱風館」(神戸市)を主宰している。

司法、医療、教育と共に、宗教を社会を支える4本柱の一つに挙げられていますが、日本人の宗教に対する関心は他の三つに比べて低いようですが。

内田例えば、内戦やクーデター、天変地異で社会秩序が崩壊したとします。生き残った人たちが集まってまずやることは、死者を弔うことです。そこからしか共同体の活動は始まらない。

「死者」という概念を持ったことで人間は他の霊長類と分岐した。サルは生きているサルと死んだサルを区別しますけれど、「死者としてのサル」の概念はない。だから墓をつくらない。

死者はもはやこの世には存在しないけれど、「存在するとは別の仕方で」生きている人間たちの振る舞いに影響を及ぼす。「あの人が今ここにいたら、何と言うだろう」「私の振る舞いをどう評するだろう」ということが規範となって、生きている人間を支配する。

確かに、「靖国問題」などにもそういう側面がありますね。

内田先の大戦でもアジアではたくさんの人たちが亡くなりました。特に日本軍に侵略され、支配された中国、朝鮮半島の人たちは日本の今の振る舞いに対して「こんなことを許したら死んだ人々に合わせる顔が無い」と思っている。靖国神社に首相が参拝しようがしまいが、現実の中国、韓国社会には何の実質的な影響もない。でも、彼らがそれを許せないと感じるのは「死者がそれを許さない」という信憑が深く根付いているからです。

今、日本で起きている外交上の「トゲ」は、我が国が戦後70年、戦争の死者たちを正しく弔ってこなかったことの負債です。日本の戦後問題は、ある意味では宗教の問題なのです。敗戦の問題、侵略の問題の宗教的意味、死者たちをどう鎮魂するかという問題に正面から取り組むことを怠ってきた結果なのです。