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エルサレムで祈りの舞を奉納した宝生流能楽師

辰巳満次郎さん(55)(1/2ページ)
2015年11月18日付 中外日報(ほっとインタビュー)

文化交流が平和の礎に

5月にイスラエルのエルサレムを訪問。「嘆きの壁」の前で能を舞い、祈りを捧げた。文化の交流が平和の礎になると信じ、日本の伝統文化を海外へ発信する。

(飯川道弘)

宝生流能楽師 辰巳満次郎さん

1959年、神戸市生まれ。シテ方宝生流能楽師。父の故辰巳孝氏に師事し、4歳で初舞台。全国で公演や実技指導、普及活動を行い、海外公演も多数。伝統的な手法による新作活動にも参画する。大阪の宝生流定期能「七宝会」主宰。東京都目黒区在住。

エルサレムで演じられたのはどのような思いからですか。

辰巳現地では様々な場所で能を奉納できました。ただ今回の訪問は能や日本文化を紹介するだけでなく、平和を祈るため、平和を願うメッセージとして能を演じるのが最大の目的でした。

約1週間滞在しましたが、いろいろな方々のご縁と不思議な力が働いて帰国直前の最終日に奇跡的に許可が下り、「嘆きの壁」という祈りの場、一般の立ち入りが規制されている「ロビンソン・アーチ」前で平和の祈りとして舞を捧げることができました。

最終日を除いて多くの人たちに能を紹介することができ、関心の高さを感じましたね。ボタニカルガーデン(植物園)の公演では古典の「羽衣」と平和を祈る新曲を奉納しました。エルサレム市長夫妻や大使館関係者ら700人が鑑賞し、現地の新聞でも報道されました。ヘブライ大では学生参加のワークショップを開き、学生や教授が「とても良かった」と感激していました。

能という日本の伝統文化を通じて祈りを表現し、それがエルサレム内外に広まったのは非常にありがたいことだったと思います。

エルサレムという地は特別な場所だったのですか。

辰巳海外へは何度も足を運び、いろいろな国で公演してきましたが、エルサレムにはかねて関心を寄せてきました。そこはキリスト教、ユダヤ教、イスラム教という世界三大宗教の聖地であるということ。その宗教間にいろいろと争いがあって歴史上、多くの方が犠牲になりました。

私は宗教や芸術、人の考え方も含めて文化を理解し合うことが一番、国と国との平和につながると考えています。いろんな人がいろんな形で文化の交流をすることで、やがて平和が構成される礎になるのではないか。こうしたことを日頃から強く思っていた時に、エルサレム訪問の話が具体化していきました。

能は人々の平和を千年以上、祈り続けてきた芸能なのです。