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「見えない世界」の魅力を発信する文芸評論家 東雅夫さん(59)(1/2ページ)

2017年12月13日付 中外日報(ほっとインタビュー)

日本人の琴線に触れる「怪談」

「文学の極意は怪談である」――。「アンソロジスト」を自称し、『文豪怪談傑作選』などを編さん。忘れられかけた名作を掘り起こし、世に送り出してきた。幻想文学や怪談の分野の文芸評論の第一人者としてその魅力を発信するとともに、近年は各地の怪談会にも精力的に足を運んでいる。

文学には、言葉の力によって現実を超えた「見えない世界」を人々にのぞかせることができる、との確信がその原動力となっている。

(佐藤慎太郎)

「見えない世界」の魅力を発信する文芸評論家 東雅夫さん
ひがし・まさお氏=1958年、神奈川県生まれ。文芸評論家、アンソロジスト。早稲田大卒。『幻想文学』誌編集長を経て現在、怪談文芸専門誌『幽』の編集顧問。『遠野物語と怪談の時代』で日本推理作家協会賞を受賞。

怪談や幻想文学の魅力とは。

これは宗教とも関連すると思いますが、人間は目の前の現実だけでは満足できない不思議な生き物です。常に現実を超えた何か、目には見えないけれど、どこかにあるらしい何かを思い描いて、それが時には生きる上での糧や指針にもなる。そういったもう一つの世界を前提としてこの世の中があるという考え方は、古代から人間が抱いてきた一種の直感です。

そこから一方で神話や宗教というものが生まれました。文学を読んだり書いたりする行為は、そのような見えない世界を言葉で探求し、生み出そうとするものであって、それが最大の魅力です。

ほとんどの文学が幻想文学になりそうですね。

現実的ではない世界やキャラクターをリアルに描写して、それを「実は夢でした」といった形で裏切らないことが大事です。

ただ「向こう側」の世界を言葉の力によって、チラリとでものぞかせてもらえれば、それはもう幻想文学だといえます。そういう意味では、スティーブン・キングの『IT』のようなホラー小説も含まれるでしょう。

ホラーというジャンルでは、日本には怪談の伝統がありますね。

佐藤春夫は「文学の極意は怪談である」と言っています。現実にはあり得ない幽霊や化け物を描写した上で、人の感情を震わせることはそれほど難しいことなのですが、確かに森鷗外や夏目漱石、川端康成ら、世に「文豪」と呼ばれる人たちは皆、生涯に何作も怪談の名作を書いています。

怪談文芸専門誌『幽』を創刊した際、人気作家への執筆依頼の反応が良かったのが思い出されます。やはり怪談は、どこか日本人の心の琴線に触れるものがあり、そこにはフィクションとしての怪談だけでなく、実話形式で語られる怪談も入ってきます。

実は、最近各地でアマチュアの人たちが集まり、「ふるさと怪談」などの「怪談会」が盛んに行われています。「語り」が本来持つ、伝える力、広める力が、まだ怪談という分野では保たれているのだといえます。