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父の一生を書でたどる相田みつを美術館館長 相田一人さん(62)(1/2ページ)

2018年5月23日付 中外日報(ほっとインタビュー)

心で思う言葉を書で表現した父

「しあわせはいつもじぶんのこころがきめる」――。人々の心に響く言葉を独特の書体によって表現した、詩人で書家の相田みつを氏(1924~91)を父に持つ。書に全てを捧げるかのように生きたその姿に反発する気持ちも大きかった。

しかし没後、全国的にも珍しい個人書家の美術館を立ち上げるに至った。

そこには、世に知られるのが遅く、これからという時に急逝した「父の本当の姿を知ってほしい」という真摯な願いがあった。

(佐藤慎太郎)

父の一生を書でたどる相田みつを美術館館長 相田一人さん
あいだ・かずひと氏=1955年、栃木県生まれ。詩人・書家の相田みつを氏の長男。大学卒業後、出版社勤務を経て父の作品の整理や遺作展の監修に携わり、96年に「相田みつを美術館」を設立、館長に就任した。

館長としての仕事を教えてください。

相田よく誤解されるのですが名誉職としての館長ではなく、数カ月ごとの展示替えの企画などに全面的に関わっています。そもそも美術館も自ら立ち上げたものですしね。「みつをの一生」といったテーマの企画展も考えているところです。

父は自分の言葉を自分の書で表現する、音楽の分野でのシンガー・ソングライターのような人。後続といえる人が出ていないので、「相田みつを」は一回性の現象なのかもしれません。

その魅力とは。

相田誰もが心に思っていても表現されてこなかった言葉であり、見る人により、光の当て方により違う受け取り方をされます。

また、大きな自然災害、阪神・淡路大震災や東日本大震災などで被災した方々は、自らの経験と重ね合わせてその言葉に共感するようです。人間は追い詰められて危機感を覚えると、言葉を頼りにしたくなるのではないでしょうか。難しい理屈は頭に入ってこない極限状態でも、父の言葉は短い一言のものが多いですからね。

作品の考え方のベースにあるのはやはり仏法ですね。作品のことを詩でも書でもなく禅宗における「偈」、その現代版とも考えていたようです。菩提寺は浄土宗ですが、若い頃に、希有の文人高僧とされた曹洞宗の武井哲應師と出会って生涯の師と仰ぎました。他力と自力を接ぎ木し、自分なりに消化した表現となっています。

ご自身と仏教の関わりは。

相田朝晩、父の唱える般若心経と観音経を聞いて育ったので、仏教は私にも自然に染み込んでいます。来館者から「相田みつをは仏教と関係あるんですね」と言われるとうれしくなります。

先日、美術館を会場にチベットの砂曼荼羅を作っていただいたところ、たくさんの来場者が真剣に鑑賞され感動しておられました。チベット仏教は日本人には直接の接点がないにもかかわらず、関心を持つ人は少なくない。そういうものに応える態勢が今の日本の仏教界には整えられていないのではないでしょうか。

ご自身は書や詩を志さなかったのですか。

相田私はただの館長で、強いて言えば経営者。4、5歳の頃に書の手ほどきを受けたかすかな記憶がありますが、あまりに不器用なのですぐに「見込みなし」と放っておかれましたよ。

今になって館長として父の代わりにと本にサインを求められることがあるのですが、書を習っていないことを説明し、必ず「下手なので」と断りを入れます。それでも謙遜と思われてしまうのですが、実際に書き始めると目をそらされてしまいます(笑い)。