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「知憲」を提唱する 谷口真由美さん(43)(1/2ページ)

2018年7月25日付 中外日報(ほっとインタビュー)

主権者を生きるとは面倒なこと

改憲論議の前に、まずは憲法を正しく知る「知憲」を提唱する。相手に合わせた分かりやすい語り口が身上。大阪大で講師を務める憲法の授業では冒頭にラジオのDJ風恋愛相談を始め、学生の心をつかんだ。大阪弁で憲法条文を翻訳した『日本国憲法 大阪おばちゃん語訳』(文藝春秋)を出版するなどユニークさで注目を集める。

民放テレビのニュースショーをはじめ、数々の情報番組にも出演。財務次官の女性記者へのセクハラ発言など理不尽な問題には鋭く突っ込む。

(岩本浩太郎)

「知憲」を提唱する 谷口真由美さん
たにぐち・まゆみさん=1975年、大阪府生まれ。97年、大阪国際大政経学部卒。99年に和歌山大大学院経済学研究科修了。2004年に大阪大大学院国際公共政策研究科を修了し、国際公共政策で博士号を取得。現在は大阪国際大准教授、大阪大非常勤講師など。

最近の改憲論議について、どのように感じますか。

谷口私は絶対的な護憲派ではありません。次世代が機嫌よう暮らせるんやったら改憲したらええと思うんです。だけど、改憲したら次世代がしんどいやろなと思うんならやったらあかん。

でもその前に、そもそも主権者がどれだけ憲法を知っていますかと。知らないのに議論のしようがない。

そこで「知憲」を提唱されているのですね。

谷口確かに現行憲法に問題がないわけではありませんよ。だけど、どう変えたいのか見えてこない。どういうふうにこの国を変えたいのかという哲学が主権者一人一人にあって当然なのに、皆がそれを放棄しているように見えます。

憲法の前文は「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」となっていますよね。ところが今の主権者は一体何か行動しているのでしょうか。自分の選挙区から出ている議員に対して何らかの働き掛けをしているのでしょうか。

そもそも国政選挙の投票率が50%台しかない。その中でどれだけ真剣に悩み抜いて投票しているか。そう考えると、まともにこの国を憂えている人がほとんどいない。そんな人らが何の改憲論議ですかと言いたい。

改憲論議以前の問題ということですか。

谷口そうです。主権者を生きるということを私たち一人一人がもっと心掛けない限り、権力はあっさり暴走します。

例えば、世界の歴史を見ても、選挙権を主張しただけで投獄された時代がありました。私たちが先代から受け継いだ権利をないがしろにしていたら、そらぁ権力から奪われてしまう。

憲法12条には「憲法が保障する自由や権利は国民の不断の努力によって保持しなければならない」ときちんと書いてありますよね。主権者を生きるということは、実はとても面倒で大変なのです。

改憲論議がしたいのであれば、まずは「知憲」ですよ。普通のおっちゃんやおばちゃんに分かるように憲法を説明せなあかん。主権者が三権分立についてきちんと理解していれば、今問題になっている加計学園や森友学園の問題がどれだけ罪深いことかということも分かると思います。

宗教と憲法の関わりでは政教分離がありますね。

谷口歴史的には王権神授説(王権は神から付与されたもので、王は神に対してのみ責任を負うとの考え)を防ぐために設けられたのが政教分離です。日本国憲法では国家神道を否定する目的がありました。ですから、首相の靖国参拝は問題になります。

ただ特定の宗教団体が政治結社や政党をつくって、その政党が与党になるといった状況は起草時には想定していなかったのでしょう。公明党は創価学会と別組織ではありますが、知らん間に宗教プロパガンダに利用されてしまう危うさははらんでいます。

現行憲法では特定の宗教団体が政党をつくることを禁止しているとまでは言えない。個人が自身の信じる宗教にのっとってグループをつくって、その代表者を出すことについてはいい。ところがそのグループが公党になって、税金が入って、特定の力を及ぼし始めると我々の人権に関わってくるので問題です。