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トップ> ほっとインタビューリスト> 最澄の魅力を発信するサントリーHD代表取締役副会長 鳥井信吾さん

最澄の魅力を発信するサントリーHD代表取締役副会長

鳥井信吾さん(66)(2/2ページ)
2019年2月13日付 中外日報(ほっとインタビュー)

最澄が著書『山家学生式』で説いた精神はあらゆる場面に通じると話す鳥井さん
最澄が著書『山家学生式』で説いた精神はあらゆる場面に通じると話す鳥井さん

八宗兼学の信心だったとか。

鳥井比叡山だけでなく、神社にもお参りする。神仏混淆ですね。外国人の目から見たら全く理解できないでしょうが、当時の日本人の自然な宗教観を信治郎もまた受け継いでいたのでしょう。

時代が変わっても創業者精神を受け継ぎ、延暦寺の御修法への支援を続けているのはなぜですか。

鳥井創業者以来の伝統を守ると同時に、根底には信治郎の天地の報恩という考えがそこはかとなく流れていて、それを変えることはできないと皆が思っているのでしょうね。

海外の経営者も企業活動で得た収入を社会に還元することに力を入れています。海外には年間に何十億円と稼ぐ経営者がいます。ですが、そうした経営者が日曜日には欠かさず教会を訪れ、恵まれない人々のために料理を無料で振る舞ったりするなど、社会奉仕活動に参加しています。

日本人は海外の経営者のそういった面を知らずに、何十億円と稼ぐ面だけを見ている。そして海外流の経営が偉いんだと思い込んだのかもしれません。もっと日本の根底にある良い面に目を向ける必要があると思いますね。

今、ITの発展は目覚ましいけれども、世界はGDP合計の2倍の負債を抱え、経済格差もますます広がるという矛盾を抱えています。これはいつ破綻しないとも限りません。そのリスクが顕在化した時にあたふたしないためにも日本人は根底にある独自の思想を見つめ直す時期に来ていると感じます。

グローバル化が進む中で、日本人の芯の部分をもう一度再認識すべき時期にあるということですか。

鳥井そうです。今、アメリカ人も自身のアイデンティティーを探し求めています。現在アメリカの消費をリードしつつある1980年以降に生まれた30代後半までのいわゆるミレニアル世代は自分たちが何者かということに敏感です。ブランドだからといって飛びつかない。

アメリカでのビジネスでは彼らに歩調を合わせなければなりません。アメリカで今バーボンウイスキーが非常に売れているのは「アメリカ人が自らの手で作った伝統的な酒」という点が受けているからなのです。

では、日本人はどうなのか。日本とは一体何なのかを皆が知りたがっているけれども、それを考える材料が見えにくくなっている気がします。だからこそ、最澄の教えが魅力的に映るのです。実は多くの現代日本人は最澄について知りたがっていると思うのです。

企業活動として文化活動への支援にも力を入れておられますね。

鳥井お酒を飲むということ自体が文化です。ウイスキーもワインもコーヒーも嗜好品ですから、それが無いと絶対生きられないわけではありません。我々のビジネス自体が文化と密接につながっています。

これからの宗教者に何を一番求めますか。

鳥井もっと宗祖を前面に出されてはどうでしょうか。宗祖の生き様や教えは非常に魅力的で、若者だけでなく年配者も宗祖のことを知りたがっているのではないか。ぜひ宗祖の生涯をもっと多くの人に伝えてほしい。

東日本大震災が起きた際、寺社が被災者にとって心理的にも物理的にも拠り所となったように、寺社は地域の拠点でもあります。都市では地域社会とのつながりが切れて孤立した人が増えていますね。これからは、お寺を支える宗教家が地域社会において大変重要な役割を果たすと思います。