ニュース画像
「誠」の隊旗を掲げた五重塔院で営まれた法要
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

合気即生活の日々

無限塾代表・合気道養神館師範 ジャック・パイエ氏

2013年6月1日付 中外日報(わが道)

ジャック・パイエ氏=1957年生まれ。フランス海外県レユニオン島出身。リヨン大卒業。1980年、初来日して合気道開祖・植芝盛平高弟の塩田剛三氏の養神館に入門。塩田氏の内弟子を通算8年間務めた。ミッテラン大統領来日の際にはSPを務めた。2000年、アメリカ・ロサンゼルスに道場を開設。再び来日し、2009年、京都に無限塾を開設した。合気道養神館7段・師範。
「合気道に恩返ししたい」と語るパイエ氏
「合気道に恩返ししたい」と語るパイエ氏

武道家・植芝盛平(1883~1969)が創始した合気道。神道や大本とも関わり合いながら創出された技には、単なる武術ではない精神哲学が込められている。京都で合気道道場・無限塾を開いているジャック・パイエ氏(55)は、約30年前に植芝の高弟・塩田剛三氏に憧れて、フランスから単身来日。以来、合気道一筋に修行に励んできた。合気道は「幸せの道」と語るパイエ氏を慕って、世界各国から「パイエ先生に習いたい」と若者が集まってくる。パイエ氏に合気道への思いを聞いた。

(武田智彦)

合気道を知ったきっかけは何ですか。

パイエ小さいころから格闘技が好きで、ブルース・リーの映画をよく見ていました。高校時代に空手を習い、大学では柔術をやりました。柔術の合宿の時に格闘技のビデオを見ていて、小柄な男性、塩田先生が次々と男を投げ倒す姿に興味を持ちました。大学を出て、1年間、軍隊に行った後、すぐに東京に来ました。

来日には勇気が必要だったのでは。

パイエ若かったから。そして先生に会いたいという気持ちがありました。

入門した当初は弟子が教え、先生には会えませんでした。貯金がなくなり、帰国しようとした時、偶然、先生に初めて会うことができました。「本当に合気道をしに来たのか」と聞かれ、チャンスを与えられました。毎朝、道場の掃除をして、1日6時間の稽古をするなら3カ月間道場にいていいと言われました。そして気付いたら内弟子になっていました。

合気道とはなんでしょうか。

パイエ合気道は人生そのもの。「合気即生活」。「幸せの道」です。合気道をするとうれしい気持ちになる。満足して、そして人に教えて恩返ししたい気持ちが広がります。

合気道は自分の隙をなくすためにやるもの。自分の中の悪いものをきれいにする。本当の自分を見つけるものです。

他の武道との違いは。

パイエ合気道は格闘技ではないですね。試合がなく勝ち負けがありません。

相手をやっつけるのではなく、相手を大事にしながらコントロールする。納得させながら投げるのです。投げられた相手に「この野郎」という気持ちを起こさせない。「もう一度投げてください」という気持ちにさせるのです。

かつて塩田先生は合気道を「自分を殺しに来た人と友達になるもの」と言いました。平和のためにあるものですが、強くないといけません。内は強くて外は柔らかいのが大切です。

神棚には何のお札を祀っていますか。

パイエ鹿島神宮と香取神宮のお札です。内弟子の時には毎年、先生と一緒に両神宮に行ってセレモニー(正式参拝)をしていました。

稽古で毎回、神棚に一礼するのはどういう思いからですか。

パイエ感謝の気持ちとお願いです。みんなを教えることができる力が与えられるように願っています。人間の力だけでは足りません。

キリスト教徒として抵抗はありませんか。

パイエ宗教ではないと思っています。日本にいるから従っています。

京都の白峯神宮に道場を開いていますが。

パイエ最初、スポーツジムでやりましたが、せっかくの京都ですし、伝統的な場所を探して、神社を見つけました。毎年、神様の前で演武をやっています。

開設はいつですか。

パイエ2005年に京都に来て、同志社大の研究所で事務局長をしながら、週1回教えていました。2009年にラストチャンスと思い、荒神口に道場を開いたのが始まりです。

塾生は。

パイエ150人くらい。そのうち子どもが55人くらいです。奈良、大阪、京都のほか、毎週東京から来ている人もいます。英語で教えるクラスもあります。英語を勉強している子どもがいる家族や、外国から帰ってきた家族が多いです。

留学生は現在3人います。今まで外国からはイギリス、アメリカが多く、カナダ、フランス、ロシア、ドイツ、カタールからも来ています。

また2カ月に1回、1~2週間、外国に教えに行っています。ロシア、ポーランド、アメリカ、カナダ、イスラエル、カタールなどに行きました。

お忙しいですね。

パイエ仕事だと思っていません。好きなことをやっているだけだから、幸せだと思います。

これからの課題は。

パイエ大勢の若い人に合気道を愛してもらうことです。このままだと合気道の将来が危ない。特に若い人に日本人がほとんどおらず、外国人ばかりです。武道にはダサいイメージがある。ただし、始めた人は続いています。自分の中が変わる実感があるからです。合気道について知られていないことがあるので、今の世代に合わせながら、どんどん外に出していきたいです。