ニュース画像
北山十八間戸の法要には100人以上の参列者が詰め掛けた
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
トップ> 5度目の春へ-東日本大震災リスト> 10.何をするにも放射能が立ちはだかる

10.何をするにも放射能が立ちはだかる

2015年4月10日付 中外日報(5度目の春へ-東日本大震災)

行き場ない大量汚染土 時間止まったままの街

汚染土が積み上げられた仮置き場(福島県浪江町で)
汚染土が積み上げられた仮置き場(福島県浪江町で)

門徒会館の再建を目指す福島県南相馬市小高、浄土真宗本願寺派光慶寺の白江順昭住職(61)には、だが気掛かりがある。着工の前提となる境内の火災跡のがれき撤去、搬出がどうなるかだ。住職は自前で業者に依頼して焼け跡を片付け、がれきを集めて多量の保管用袋に入れ仮置きしている。

ところが環境省の測定で、がれきの放射線量が毎時0・23マイクロシーベルトの基準以下だとして「除染はしない」と告げられた。一方で、境内にはもっと線量値の高いスポットが多く、住職は「納得できない」。搬出して貯蔵する先があるのか、負担はどうなるのか。

会館の次の本堂再建は、東京五輪による資材高騰や作業員不足を避けての着工。本山の伝灯奉告法要とも絡め、寺創建200年になる2026年までに完成させるのが住職の願いだが、必要になる多額の費用捻出は「当然、東京電力の賠償と関係してきます」。

避難を強制され、漏電管理ができずに火災が起きたと訴えるつもりだ。放射能被害で生じた事態の中で、何をしようとしてもさらに放射能の問題が立ちはだかる。

隣の浪江町では広い地域が帰還困難区域。山間部の津島地区に監視ゲートで厳重なチェックを受けて入ると、国道にもかかわらず一般車は見えず、除染作業のトラックばかりだ。そこら中に「仮置き場」の看板が立ち、広大な田畑に何万も積み上げられた汚染土の入った黒い袋が、まだ残る雪と不気味な対比を見せる。

除染基地のプレハブ建屋が並ぶ道端の放射線モニタリングポストは0・4マイクロシーベルトと非常に高い数値だ。集落に近い畑周辺で、防護服にヘルメット、ゴーグルにマスクという重装備の作業員たちが除草と表土のはぎ取りをしていた。

環境省などによる除染で出る汚染土は最大2040万立方メートル、廃棄物焼却灰などが160万立方メートルで合わせて東京ドーム18杯分にもなる。国の中間貯蔵施設は、数十年も故郷を放棄せざるを得ない予定地住民らの困惑もあって、用地確保は0・4%しか進んでいない。汚染物は、各家の庭なども含め県内7万5千カ所以上に仮置きされている。

美しい山並みの間に広がる津島地区の村落は、生き物の気配がない。立ち並ぶ家々も鎮守の祠も寺も荒れ放題。バス停の標識に枯れたツタが絡まり、学校の雑草だらけのグラウンドは汚染土が山積みされていた。

逆に沿岸部の請戸地区は、津波で消失した廃虚がどこまでも広がる。見渡す限りの草原には車や打ち上がった船の残骸がまだ残り、壊れた防波堤の上から彼方に原発の排気塔がかすんで見えた。ここは比較的線量が下がり早期帰還を目指すが、賠償額が多いが帰れない地区との間で住民に亀裂も生まれている。

市街地では、地震で壊れた民家が4年たっても放置されている。信号がむなしく点滅するメーンストリートも人けや通る車はなく、時折、警戒のパトカーが走るだけ。浪江駅前には町営バスが駐車した状態で錆びつく。新聞販売店には震災翌日から数日間の新聞が配られることなく残され、時間は止まったままだ。

通行可能な国道6号に出ると、「動物と衝突注意」の看板が目立つ。逃げた家畜や野生の獣が多いのだと、写真で町を記録する南相馬市の真宗大谷派原町別院の僧侶木ノ下秀昭さん(77)が、道路を走り回るイノシシの写真を見せる。そして牛舎につながれた牛が白骨化しているのを示すと、「悲惨なことです」と視線を落とした。

(北村敏泰)