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「仏教徒は心病む人の友に」などと語り合う近藤管長㊨と河野妙心寺派前管長
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<連載・断面>宗会②

2014年4月4日付 中外日報

巨額損失追及 「不信任」「解散」「総辞職」 荒れた高野山

高野山の朝は1180年間変わらぬ「御生身供」で始まる。気温が氷点下の昨年2月26日早朝、奥之院で弘法大師廟の御廟へ食事を運ぶ僧侶の口から白い息が漏れた。

そのころ、同じ山上では第145次高野山真言宗宗会の開幕を数時間後に控え、内局不信任案について賛成派、反対派それぞれの議員が熾烈な多数派工作を繰り広げ、高野山一帯はいつにない異様な熱気に包まれていた。

宗会は資産運用失敗による億単位の巨額損失問題で大きく揺れ、庄野光昭・宗務総長(当時)に突き付けられた不信任案は、賛成17人、反対17人の可否同数となり、最終的には安藤尊仁議長の1票で可決された。

総辞職か、宗会の解散かの選択を迫られた庄野宗務総長は不信任案を不服として宗会を解散したが、選挙では賛成派が多数を制した。

そして、それまで強気だった同宗務総長は一転、混乱が広がることを避け、予算案などの宗会通過と引き換えに辞任した。

不信任案の可決、そして宗会解散は高野山真言宗で戦後初めての出来事だ。宗会の混乱は一般紙でも大きく報道され、宗門からも「開創1200年に向かって僧俗一丸となって頑張っている中、お大師様、浄財を寄進していただいた檀信徒に恥ずかしい」との声が上がった。

安藤議長は「高野山開創1200年記念大法会をきちっとした形でスタートさせるために、宗会として資産運用の実態を知っておかねばならなかった。議長と総長の抗争やクーデターと言われたが、そうではない」と振り返る。一方、庄野前宗務総長は多くは語らなかった。

「不信任」「解散」「総辞職」――聖なる世界とはおよそ無縁な「政治用語」が付きまとう宗会。苦しむ人々を救い助け、人々の幸せのために教化、伝道を展開することを話し合う場が、なぜこうなってしまったのか。

「宗会議員になるには時間や資金面など余裕がなければならない。寺院の規模などに左右されたり、世襲議員が増えるなど固定化している。開かれた宗会とは言い難い面もある」と、宗教法人の法律や制度に詳しい平野武・龍谷大名誉教授は語る。

◇        ◇

「議長、動議があります」。昨年6月、京都府内に本山がある伝統仏教教団の宗会議場に、鋭い声が響き渡った。

一般質問を終え、議長が本会議終了を告げようとした瞬間、それを遮るかのように一人の議員が手を挙げた。怪訝そうな表情の議長。仕方なく発言を許すと、「教団要職者の過去の金銭にまつわる問題を内局は無視し続けている。どうなっているのか」と内局に対する不信任の緊急動議が飛び出した。

議場は騒然、議長と運営委員らが急遽、協議をし始めた。結果的には、賛成少数で不採用となったが……。

2009年に開かれた浄土宗第98次定期宗議会では、当時の里見法雄・宗務総長に不信任案が突き付けられた。所信に掲げた児童虐待問題対策の妥当性などが厳しく問われたが、否決された。

不信任案の提出や宗会の解散は宗門の法規に定められており、内局と宗会が緊張感を持って宗会運営に当たるために必要な制度でもある。

しかし、それが本来の目的から離れて“政争の具”と化せば、いたずらに宗門を混乱させるだけだ。

このような状況を見て「宗会は独り善がり。宗内世論そっちのけで議論している」(本願寺派女性僧侶)、「地方寺院との距離を感じる」(日蓮宗僧侶)などと宗会の在り方に意見や感想を抱く人もいる。一方、宗内寺院側にも問題がないわけではない。本願寺派では、あるベテラン議員が「宗内寺院の宗政、宗会への無関心が一番怖い」と語る。