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<連載・断面>宗会③

2014年4月9日付 中外日報

多様化の時代に対応できるのか 権力の集中阻める合議制

「宗教団体では特に1人に権力が集中することがあってはならない。合議制でないと間違った方向に進む恐れがある」と、熊本県の寺院住職は宗会の必要性を強調する。日本の宗教教団に議会制度が最初に導入されたのは1881(明治14)年。それ以来、宗会は民主的な教団運営の要とされてきた。しかし、すでに130年余りの時が過ぎ、“制度疲労”も懸念され、「宗会では時間がかかり過ぎて現代社会の諸課題に即応できない」との批判もある。

熊本の住職はオウム真理教のことを念頭に置いて語ったのだろう。カルト教団と伝統教団を同一に論じてはならないが、正しい教えや教義を見失ってしまえば、「宗教」の名の下に人の命が奪われてしまう危険性もあることを忘れてはならない。一部の人たちに教団全体が引きずられて誤った方向に行かないためには、さまざまな意見を持つ人たちが合議制で教団を運営することが大切だ。

「伝統仏教教団は、江戸時代までは宗祖の血脈継承者や法灯継承者が教団の統率者として君臨し、いわゆる『絶対君主制』という封建的な形態で維持されてきた。しかし、明治になって自由民権運動の高まりと、明治政府が西洋から議会制を採り入れようとしたことが影響し、多くの伝統教団が議会制度を導入した」と、宗教法人法などに詳しい平野武・龍谷大名誉教授は宗会の歴史を説明する。

宗会は教団の民主化と近代化に貢献したが、「合議制では時として意見が分かれて前に進まず、対応すべきことにきちんと対応し切れていない」との意見もある。

日蓮宗では大荒行で知られる千葉県市川市の加行所で、一昨年に行僧が死亡した問題について宗会で改善策が議論されたが、宗政会派の間で意見が二つに割れて議論が長引き、結局、行僧の死因の究明など根本的な解決策が見いだされないままになった。亡くなった行僧の縁故者は「宗会が最後の頼みだったのに」と悔しさをにじませた。

教団内の問題だけではない。人権、平和、原発、環境、教育、医療、生命倫理問題など、宗教教団が対応を迫られている現代社会の課題は多様化し、しかも即応を求められているのだ。

戦後に急速に教線を拡大した創価学会や立正佼成会などの新宗教では議会制度ではなく、理事会・評議員会制度を採用している。「意思決定が早いだけでなく、理事会で決定した内容を全国の教会が共有することで教団全体に一体感が生まれています」と立正佼成会関係者は語る。

ただ、同じ新宗教教団でも金光教や黒住教などでは、議会制度を採り入れている。黒住教教務総長の黒住宗道・副教主は「議会は執行部が提案した議案を慎重に審議してくれている。ベテラン議員らの間違いの指摘やいいアドバイスも欠かすことはできず、適切な意思決定が行われ、これからも制度を変えるつもりはない」と話す。

「伝統仏教教団と新宗教では、包括法人と単立法人という組織の違いがある。全国の寺院や教会などの被包括法人を束ねる包括宗教法人の運営では宗会などの合議制が必要だが、(創価学会などの)新宗教では全国の施設は法人格がなく、教団は単立法人として登記されている場合が多く、中央で決めるだけで済む」と平野名誉教授。

「宗教法人法」上、教団の議決は3人以上の責任役員の過半数で行える。しかしあえて宗会、議会を設置している伝統教団や金光教、黒住教などは、より多くの人たちの意見を教団運営に反映させようとしている。

1900(明治33)年に議会を導入した金光教の幹部は「1980年の教規改正時に『教団会』に名称を変更し、権限に教務執行についての当局への助言と協賛を加えた」と話す。これによって、とかく執行部に批判的な議論になりがちな議会のマイナス面を克服したという。

これからの時代の教団の意思決定とは、どのような形態が理想なのか。その中で宗会が担うべき役割とは何か。

宗会が教団運営に重要な役割を果たしている曹洞宗では、経営破綻した宗門関係学校だった旧多々良学園問題の解決に10年もの歳月を費やした。