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<連載・断面>宗会④

2014年4月11日付 中外日報

旧多々良学園問題から見える 宗会と檀信徒の乖離

「10億円で済めば安いもの。駒沢大経営問題の時のように150億円とか、傷が深くならないうちに解決できて良かった」「全面勝訴とうたっていたのにどうして10億円も払って和解なのか。10年間も議論してきて問題の真相は結局うやむやのまま」――。

2月に東京・芝の曹洞宗宗務庁で開かれた宗会では、宗門関係学校だった旧多々良学園(山口県防府市)の経営破綻問題で、金融機関5行からの損害賠償訴訟に対し、広島高裁の和解勧告を受け入れて10億円の和解金を支出することを決めたが、この決定に対して宗門関係者の評価は分かれている。

宗会意識アンケートで、宗会は不必要だとした約1割の人は、「大寺院や実力者の集まりで、われわれ一般寺院とは縁遠い存在」などをその理由に挙げた。

宗内世論を代表する組織であるはずの宗会が、なぜ、そういう指摘を受けるのか。

曹洞宗が今回支払う和解金は、全国の宗門寺院からの賦課金や教師納金等で、その原資は檀信徒が納める浄財。宗内からは「貴重な浄財を内局が無駄に使っているという感覚が議員にはないのか」との批判も出ている。

宗会の果たす最も重要な役割の一つが予・決算の審議、審査だ。本山、宗派に寄せられた浄財を、内局が教団運営や布教、伝道のために有効に分配、活用しているかに目を光らせる。

曹洞宗の宗会では、10億円の和解金を支出するため2013年度宗派一般会計の補正予算案が上程され、全会一致で承認された。

内局は「10億円は大変重い負担。(16億円の支払いを命じた)第一審の判決は承服できないが、判決を覆すためにこれ以上裁判を長期化させることは、本宗の社会的信用の保全には必ずしも直結しない」と説明、和解勧告を受け入れることに議員の理解を求めた。

「これ以上裁判を続けて世間を騒がせるのは得策ではないと考えたのではないか」と、曹洞宗の宗政に通じた事情通は、内局、そして宗会の判断に一定の理解を示す。

しかし、その一方で「予算は全て宗祖の教えをひろめるために使われるべきであり、だから宗会は予算案をしっかりと審議しなければならないのに、そのことが忘れられてしまっている。質問で刺激的なことを言えば、内局からすぐに押さえ付けられる雰囲気がある。また議員らも、いつかは自分も内局員になる可能性があるのだからと健全な議論をしなくなってしまっている」と指摘する。

このたびの宗会で、10億円もの宗門の浄財を費消するに当たって十分な論議が尽くされたかについては疑問が残るという声もある。

億単位、数千万単位の数字がずらりと並ぶ分厚い予算書。曹洞宗と並ぶある巨大伝統教団のベテラン議員は9桁の数字を目で追いながら「こうした数字を見ていると現実感が乏しくなっていく」と漏らした。

所属寺院数が数千から1万を超えるような大規模教団では、予算額も膨れ上がり、実際にそれら全てのお金が具体的にどう使われるか細部にまで想像力が及ばない、ということなのか。

この議員は「予算は一般寺院の住職や信徒らが納めた数千円、数万円という浄財によって成り立っているのであり、議員は常にそういう人々の“顔”を思い浮かべながら予算書の全ての数字と向かい合う真摯さが求められている」と、自戒を込めつつ語った。

宗派にもよるが、ほとんどの宗会は手続きを踏めば傍聴することができる。3月に本願寺派の宗会を傍聴した福岡教区の組長らは「私たち以外に一般寺院の傍聴者がいないのが意外だった」と言う。

宗会と有権者の乖離は、議員を選んだ側にも責任があることを忘れてはならない。宗会で何が問題となり、議論されているかをしっかりと把握しておく必要がある。