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<連載・断面>宗会⑧

2014年5月2日付 中外日報

宗政調査権と議員資質 “伝家の宝刀”抜けず

高野山真言宗で宗規を見直す機運が高まっている。資産運用損失問題を受けて正・副議長と5人の宗会議員で組織される参事会の機能を強化するなど、内局の業務を監査できるようにしようというものだ。宗会の「宗政調査権」の行使に類する動きといえる。

憲法には国民の信託を受けた国会が、政府を監視し、国政に関する重大な問題を調査できる権限が定められている。その代表的な証人喚問は、贈収賄や疑獄事件のたびに政府与党要人を対象に実施を求める動きが出る。

同様に宗会に宗政調査権が付与されている教団もあり、重大な問題が生じたときにそれを解決するために行使することができる。しかし、これまでに行使されたという話は聞かず、「せっかくの調査権が形骸化しているのではないか」という声もある。その背景には、適用するほどの大きな問題やトラブルがなかったということがあり、これは幸いだが、宗会と内局の間の緊張関係も影響しているのではないかとの声がある。

「現在の宗務庁職員が知る限りでは、これまでに使われたことはない。宗議会の制度や規程については議員になれば勉強するが、具体的な行使事例がなく忘れられてしまっているのが現実」と天台宗の宗議会担当職員は語る。

同宗では、宗制の宗議会規程の第3章「権限」の中に「宗議会は、宗務に関する検査や監査を請求できる」「証人や関係者の出頭及び証言、記録の提出を請求することができる」など、3条7項目にわたって詳しく「調査権」を規定している。にもかかわらず、1967年に現行の宗規が定められてから、一度も使われたことはない。

また、日蓮宗では宗憲第38条に「宗会は、内局の宗務に関する調査を行い、記録の提出を請求することができる」と規定されているが、適用事例はない。予算等は学識経験者3人と宗会議員2人で構成されている監査会がチェックしている。

浄土真宗本願寺派では宗会会議規則で「宗務調査」が定められている。議員15人以上の連名で宗務調査発議ができ、証人や参考人招致も可能だ。しかし、十数年前に起きた、墓地造成をめぐって約2億円の浄財が闇に消えた北山別院問題でも行使されることはなく、この時は司法機関である監正局への申告や京都地裁への刑事告訴(不起訴)で事態の収拾を図ろうとした。

他のほとんどの教団では規定はなく、宗政調査権の有無等を尋ねたところ、「宗勢調査」と勘違いする教団もあった。

宗会の重要な権限なのに、それが使われることなく「忘れられてしまっている」のはどうしてなのか。内局と宗会の関係が、予算案等を審議、議決するだけになってしまい、自主的に宗門の問題解決に取り組む姿勢が少ないとも伝えられる。「内局主導の上意下達の宗会になっている」というのは臨済宗の議員だ。それは議員の資質の問題とも無関係ではない。

「4年の任期中、一度も発言しない議員もいる。それでも歳費は規定通りに支給されている」(本願寺派の元議員)、「委員会ですべて審議を済ませ、本会議では、質問も答弁も台本を読み上げる感じだ」(真言宗の宗会関係者)など、本紙が3月に実施した宗会意識アンケートでは、宗会の形骸化や議員の問題点を指摘する声も聞かれた。

議員になった理由も尋ねたが、「周囲から勧められた」「年功序列で順番が決まっているので選挙は事実上ないのも同じ」など、議員の自覚とやる気を疑問視せざるを得ない回答もあった。

「より良い宗門にしてほしい」「内局が暴走しないようにチェックし、宗門の抱える諸問題を解決に導いてほしい」。有権者はこうした思いをおのおのの一票に託している。それなのに議員に選良としての自覚と責任が希薄で、議案審議も形骸化しているとすれば、宗政調査権も絵に描いた餅に帰すのも当然かもしれない。