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<連載・断面>新宗教⑤

2014年7月25日付 中外日報

海外活動分かりやすい教え浸透

サッカーワールドカップの熱気が冷めやらぬブラジル。その南東部、南半球最大の都市サンパウロに、ブラジル霊友会館がある。ブラジル霊友会は1975年に発足し、今年会員が20万人を超えた。言葉も文化も異なる国の人々に、日本生まれの新宗教が受け入れられている。

ブラジル霊友会では、発足当初こそ日系人の入会が多かったが、今は日系以外のブラジル人が多数を占める。経典『青経巻』のポルトガル語版を制作し、独自の機関紙を発行。地方拠点を中心に地道な会員育成を継続してきたことが実を結び、南米各国にも広がっている。

ブラジルは貧富の差が激しく犯罪率も高い。会員の中にも麻薬中毒で苦しんでいたり犯罪歴があったりと、複雑な問題を抱える人が少なくないという。在家の菩薩行で世界平和を目指す同会の会員は、導いた会員と共に困難を乗り越えることを日々の修行としている。木村隆志・企画広報室長は「どこの国にいても、困っている人に手を差し伸べようとする思いは変わらない」と語り、教勢拡大は海外に住む会員の修行の結果だと説明する。

霊友会の海外会員は、約289万人。国内約137万人の2倍以上に上る。フランスでは教えなどの確認がされないまま規制すべき団体「セクト」に一時指定されたこともあったが、フランス政府関係者が来日した際に教えや活動内容を説明した結果、指定は外された。現在はヨーロッパ仏教連盟にも加盟し、地域社会に溶け込んでいる。

創価学会の海外会員は約176万人、生長の家約103万人など、日本以外で教線を伸ばす教団は多い。海外における日本の新宗教に詳しい寺田喜朗・大正大准教授は、国境を超えて受け入れられる理由を「分かりやすさ」だと説明する。「新しく生まれた宗教は、一般の人々に分かりやすい教え・実践を説いてきており、それは外国でも共通」という。

1990年前後に行われた「7カ国国際比較調査」では、信仰を持つ人の率はアメリカで85・3%、イギリスで64・2%など、日本の36・5%より軒並み高い。寺田准教授は「宗教の話を聞きに行くことが日本ほど特別なことではなく、その教えに魅力を感じれば入会も早い」と、他宗教に対する心理的な垣根が低いことを指摘する。

5月の最終月曜日、アメリカの戦没者追悼の祝日「メモリアルデー」に、ハワイのアラモアナ海岸を約5万人の人たちが埋め尽くした。真如苑が主催する灯籠流しに集まった人たちだ。夕日が映える波間に、亡くなった家族への思いを書き込んだ灯籠を海に流していく。昨年も来たという女性は「生前言えなかったことを灯籠に託した」と涙を浮かべ、別の女性は「知らない人とも故人のことを語り合い、家族のように思いを共有できた」と声を震わせた。

1999年に始めたこの行事には、年々参加者が増加。集まる人の大半は現地の一般市民や観光客だ。ハワイはキリスト教徒が多いが、故人を供養したいという思いは宗教宗派の枠を超えている。

海外伝道に際して経典の現地語訳は不可欠だが、大本はエスペラントへの翻訳に力を入れている。エスペラントはどの国の人も平等に使えるようにと作られた人工言語。神意を世界にあまねく伝えるため、大本は1923年にエスペラント運動を始め、信徒らに習得を奨励した。出口王仁三郎教祖も単語を書いた紙を壁、机、トイレの戸など自宅の至る所に貼り、率先して学んだ。

これまでエスペラントに翻訳してきた多くの文献は、さらに各国語に翻訳されている。出口日出麿・三代教主補の教書『生きがいの探求』は、86年にエスペラント版を出したことで、モンゴル国立大教授の目に留まった。教授は大本信徒ではなかったが、その内容に感銘を受けモンゴル語への翻訳を決めたという。

松田一・亀岡宣教センター長は「エスペラントに訳しておくとエスペランチストが大本を知り、それぞれの母国語に訳して世界へと広がっていくことが期待できる。インターネットを通じて今後新たな展開が出てくるかもしれない」と話す。

大本のホームページにはエスペラントからの翻訳を基にしたハンガリー語やロシア語などのページもあり、歴代教主の事績も世界に向けて伝えられている。