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<連載・断面>賦課金 第5回

2014年9月24日付 中外日報

護持口数、自己申告に不信感

公平な基準を

「今年も来たなと。宗門護持のために納付はするが、小さなうちの寺よりもっと負担すべき寺がある」。毎年5月末までに送付される賦課金告知書を手に、山陰地方の山あいの村にある浄土真宗本願寺派の寺院住職はこう不公平感を口にして、ため息をついた。

本願寺派は2005年、不公平感の払拭と宗門財政の安定化を目指し、長年の懸案だった賦課制度の改革を不二川総局の下で断行したが、当時最も調整が難航した護持口数への不満は、今もなおくすぶっている。

宗門が各寺院に課す第1種賦課金は、寺院ごとに定められた護持口数などを点数化し、1点当たり2600円を掛けて年間納付額を算出する。14年度の宗派予算約60億円のうち全国約1万カ寺が負担する第1~4種の賦課金総額は約19億5千万円に上る。

護持口数は、従来の届出門徒戸数に代わる賦課制度の指標として1970年に導入された。口数は寺院の自己申告に基づき、教区の調整を経て総局が決定するが、各寺院の宗門護持の負担力を正確に反映していないという声は根強い。

護持口数が導入されたのは、高度経済成長に伴い門徒の経済力に大都市圏と地方で格差が生じたためだ。06年に総局権限で定めた目標値をベースに口数が見直され、全国の護持口数の総計は現在約80万3千。これに対し全国の届出門徒戸数は約83万戸。東京や大阪教区では口数が戸数を2~3倍上回るが、逆に口数が戸数を下回る教区は全国32教区中、3分の2以上だ。

「国の場合、税金をごまかすと厳しい罰則が科される。宗門も護持口数の“過少申告”には同様の姿勢で臨むべきだ」。宗会でこのような意見が出たこともあったが、自己申告に罰則はそぐわないとの声もある。

06年に教区の口数が約2倍に増えた大阪。当時、島下組の組長だった武田達城・千里寺住職は「口数の調整を組(最小の行政単位)に丸投げし、宗派は手を汚そうとしなかった。調整で各寺の本音が出て互いに不信感が残り、もうこりごりという住職も多い。口数はあくまで『懇念』というのが私の考え。賦課金の算定基準にするのは無理がある。見直すのなら公平性が保てる別の要素を基準にするべきだ」と提案する。

戸数から移行

護持口数を第1種賦課金だけでなく、12年に新設された第4種賦課金の基準としても適用しようとする動きがある。第4種は、かつて宗門の確定財源の一つだった門徒講普通講金が賦課金へ一本化されて生まれた。10年の賦課金審議会答申では、門徒講金の賦課金化に伴い基準を門徒戸数から護持口数にシフトするよう提言している。

門徒講金の算定基準は門徒戸数で、門徒1戸につき千円の進納が各寺院に依頼されていた。賦課金への一本化に際しては、正確な数値調査が昭和20年代以降行われていない門徒戸数を基準とすることに宗内で異論が続出。このため第4種賦課金は「当分の間、従前の門徒講普通講金相当額をもって充てる」と妥協が図られた経緯がある。

第4種の賦課基準は16年3月31日までに見直すことになっているが、宗内には「06年の護持口数の見直しで口数が大きく増減した教区がある。調整が必要だ」との指摘もあり、基準を戸数から口数へ移行するのは簡単ではない。

重い病で入院中の秋田県の住職は訪ねて来た訪問者の姿を見るや「本山の人ですね。賦課金は元気になったら必ず、必ず払いますから。申し訳ない」。入院中も賦課金を気に病む住職の姿は「それほどの心理的負担なのか」と訪問者の脳裏に焼き付いている。

護持口数も門徒戸数も、ベースにあるのは共に寺院の自己申告だ。公平性はどうすれば担保されるのか。長年にわたる改革の議論を経ても、今なお答えは示されていない。賦課金に悩む住職の姿は、公平な賦課金制度の構築に向けた抜本的な改革の必要性を物語っているようだ。

(おわり)