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<連載・断面>天台宗の現状と課題 第2回

2014年12月12日付 中外日報

公募しても活躍の場ない

10年前に中止

「道心のあるあなた、2年間、比叡山で修行しませんか」――。

天台宗では1995年春、祖師鑽仰大法会の記念事業の一環として僧侶の一般公募を開始した。目的は宗門の将来を担う有益な人材の発掘と育成だった。僧侶の資質低下が叫ばれ、その対策や、寺院後継者不足で約3千カ寺のうち約25%(2012年度名簿による)を兼務、無住寺院が占めていた状況の解消にもつながるはずだった。

募集人数は年間3人と少数だが、2年間の修行を経て、順調に僧侶が育っていった。しかし、10年ほど前に突然公募は中止され、現在に至るまで再開されていない。

宗務庁にその理由を問うと、「今でも一般の方から問い合わせはあります。でも、せっかく修行して僧侶になっても活躍の場を提供できなくなった」という。

当初は全国から情報を募り、空いているお寺を紹介して入寺してもらっていたが、途中からうまくいかなくなった。空き寺があっても地理的な条件が合わなかったり、生活のできないようなお寺だったりしたからだ。

全国の天台宗寺院の事情に詳しい仏具店経営者は「兼務寺を他人に譲ったという話はほとんど聞きません。親族、法類や法縁があるなら別ですが、師弟関係もない、全くの他人に無償で譲ることはまずありません。あったとしても、それは檀家等のほとんど無いお寺です」と話す。

さらに「本務寺の運営や事業のために、兼務寺を利用するのが当たり前になっています」とも。

宗派が公募し、在家から一大発心して僧侶の道を志す人がいるのに、既得権益を守ろうとする宗門僧侶らの体質がその行く先を拒んでいる。

檀家側が拒否

これらを「寺院の世襲化がもたらした弊害」とみる向きもあるが、都市と地方では事情は少し異なる。

「いい人がいれば、すぐにでも私が兼務している寺に入ってもらいたいと思っています」と言うのは滋賀県の50代の住職。「でも、やってくれる人は見つかりません。田舎の小さな寺なのでなかなか難しい」

また、「別の兼務寺の檀家さんは、これまでずっと住職がいなかったんだから今さら来られても困る、と言います」と、檀家側が拒否しているケースもあるという。

別の住職は「檀家さんは、そのお寺で育ち、自分たちのことをよく分かっている人に継いでもらいたいと願っています。私物化は許されませんが、自分の寺だからこそ一生懸命になれるという面もあります」としつつも、「でも布教や教化活動で実績を挙げている住職に在家出身者が多いという話もよく耳にしますね」と言う。

このような意見などを反映して20年前に始まった僧侶の一般公募だったが、宗務庁の担当者は「近いうちに再開する動きは今のところありません。今後もっと寺院の実態調査が進めば、現実に即した形で再開されることがあるでしょう」との見通しを示した。

新体制構築を

来年、天台宗では祖師先徳鑽仰大法会の第2期が始まり、その一つとして比叡山回峰行を始めた相応和尚の1100年遠忌を営む。

現在も回峰行者たちは妻帯せず、山に籠もり、伝教大師の遺訓でもある弟子を育てることをしっかりと守り伝えている。宗内には「遠忌が人材育成について考える機会になれば」と期待する声もある。

一昨年から教師の資質向上のための研修会が始まったことは「一歩前進」ともいえるが、僧侶の一般公募の再開の見通しが立たない状況で、道心、発心ある僧侶を育成するための新たな体制の構築は重要な課題だ。

人材育成では研修等もさることながら、葬儀や法事も大切な学びの場だ。しかし、それが葬送儀礼のシステム化や直葬などの簡略化などで次第に失われつつある。