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<連載・断面>天台宗の現状と課題 第3回

2014年12月17日付 中外日報

真の学びは戒律に帰結

葬儀社任せに

「葬儀社の方々は尊い仕事をなされておられ、私たち僧侶にとって、とても大切な存在です。しかし、彼らにすっかり依存してしまっているのは問題です」と話すのは、首都圏の若手住職。

「司会者や葬儀ディレクターの指示に従って、ただお経を読むだけのときもあり、法話をしなくても、代わりに仏事や教えまで丁寧に解説してくれるのです。『このままでいいのだろうか』と疑問を感じながら導師を勤めています」というのだから、事態はかなり深刻だ。

葬儀は、教化活動の貴重な機会であるとともに、若手の僧侶にとっては学びの場だ。しかし、葬儀社主導で葬儀がシステム化され、僧侶は“歯車”の一つと化し、さらに直葬、家族葬など簡略化も進んで、葬儀が学びの場となっていないのだ。僧侶はどこに学びの場を求めたらいいのだろうか。

教師研修進む

2年前、当時の阿純孝・宗務総長はこうした現状を考慮して、僧侶の資質向上のため「再教育の場が必要」と、新たな教師研修制度を設けた。

研修会は年5回程度、2泊3日の日程で全国で開かれ、仏教史や宗祖・祖師の概論、法儀、法華経から、日常勤行、葬送儀礼についてなど教学、実践に関わる30種の講義が行われている。

「一般大学を出たので、天台学や仏教学を学べる場所を探していた」(20代僧侶)、「学生時代に習ったことだが、すっかり忘れていて、とても勉強になった」(60代僧侶)、「分かりやすい講義で、本気でもう一度学習してみようという気持ちになった」(40代僧侶)と、受講者の評判は良い。

「講師陣の選定から事前の模擬講義など、時間をかけて準備しています」(宗務庁の担当職員)と、主催する宗派側もかなりの力の入れようだ。

スタートから2年を経て教師研修会は順調に参加者を伸ばしており、定着しつつある。ただ、大切なのは研修会で学んだ知識や教えを檀信徒教化にどう生かしていくかだが、それには課題もある。

「よく僧侶が社会や人々の要請に応えていないとか、布教、教化活動をもっと積極的に展開する必要があるといわれますが、何かを求められれば私たちもそれに応えようと努力もできます。でも実際は私たち僧侶に、人々は何も求めていないのです。葬儀と法事の道具の一つくらいに思われているのが現実です」

福岡県の檀家寺の住職はこう嘆くが、都市部に限らず地方でも、人々と寺との関係性は希薄化している。

資質向上とは

人材育成に詳しい元内局員の一人は「現在の人材育成システムで基礎知識をしっかりと身に付け、そこから外でどんどん経験を積んでいってもらいたい。そして現代社会から突き付けられるさまざまなニーズに対応できるようになってほしい。そのためにも、さまざまな誘惑がある中でいかに自分を律し、自制していけるかどうかが大事だ。僧侶の資質向上への学びの道は、結局は戒律に帰結する」と語った。

近年、天台宗の僧侶は「出家と在家の違いがなくなりつつある」と指摘する声もある。戒律をしっかり守って日々の生活を送っている僧侶は少なくなっているというのだ。

自らが活動の現場で主体的に学びの場を見いだせず、研修会で再教育を行わなければならないという現状こそ問題だが、その研修会でいくら教学や法儀を学んでも肝心な戒律を守ることもできないようでは、資質向上にはつながらない。今後は、戒律を重んじる僧侶育成への取り組みが重要な課題になってくるのではないか。

(おわり)